日中間の政治状況は高市首相の「台湾有事発言」を機に厳しい状況が続くが、経済関係は活況を呈している。世界最大の消費市場・中国の需要拡大を見込み、新規進出や事業拡大を図る日本企業が飲食・小売り・サービス業を中心に相次いでいる。連載企画で過去・現在・未来を深掘りする。
中国政府系団体が主催する第4回中国国際サプライチェーン(供給網)促進博覧会が6月22日、北京で開幕した。日中関係に改善の兆しが見えない中、日本企業も出展してサービスや商品を積極的にPRしたほか、日本の財界幹部や企業経営者ら多数が参加した。
共産党序列6位の丁薛祥筆頭副総理が開幕式で演説、世界的なサプライチェーンの安定に向けて、国際協力の重要性を訴えた。
今回の博覧会には85カ国・地域から1200超の企業・団体が出展した。外資系企業の比率は36.5%で国別では米国が最多。半導体大手「エヌビディア」は今回初めて設けられた人工知能(AI)コーナーに、巨大ブースを出展した。米エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)はビデオメッセージを寄せ、「中国は世界で重要な科学技術と産業の中心の一つであり、エンジニアがずばぬけている。開発者の行動は素早く、企業も並外れた規模で成長している」と語り、中国重視の姿勢を示した。米国からはアップルやテスラ、マイクロン・テクノロジー、クアルコムなど大手ハイテク企業がこぞって出展した。
日本からは、パナソニックや住友電気工業、AGCのほか、ダイキン工業、日本通運を傘下に持つNIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)、みずほ銀行など12の企業・団体がブースを設けた。このうち日本貿易振興機構(ジェトロ)のブースでは過去最多の25社が参加し、各社が様々な生活用品を展示していた。
関西財界からは、関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)と大阪商工会議所の鳥井信吾会頭(サントリーホールディングス副会長)が出席。日本商工会議所も、販路開拓を目的とする視察会を企画し、会員の中小企業から経営者ら10人が参加した。
中国政府はAI関連の供給網の整備を急いでおり、会場にもAIの専門展示エリアを設けた。
関西経済連合会、大阪商工会議所など関西の経済団体が10月下旬に訪中団を派遣する。北京市や内陸部の陝西省西安市を訪れる予定で80人程度の参加を想定。中国政府や現地の経済団体との会談を調整しており、日中関係が冷え込む中、経済面での交流維持をはかる。
ジェトロが最近まとめた「中国進出の日本企業の全体像(2025~2026)」報告によると、在中国日系企業の63%が黒字見込みという。
黒字が多い業種は精密・医療機器(81%)、金融・保険(80%)、電気・電子部品(75%)で、中国の高度化する産業構造と合致している。「拡大」回答は21%で、最多は「現状維持」64%、「縮小・撤退」は14%と限定的だった。
同報告は進出企業が直面する課題として製造業の8割、非製造業の7割が「最大の競合は中国企業」と回答した。日本企業の強みは性能・品質、アフターサービス。弱みは価格競争力、製品投入スピードと指摘。「中国企業は低価格・高速開発で勝負、日本企業は高付加価値で差別化を図るべきだ」としている。
中国市場で需要が拡大し、チャンスとなる領域として、EV(電気自動車)、半導体、医療機器、自動化設備、スポーツ衣料、冷凍食品、SDGs関連製品などを列挙。
「これらは日本企業の技術力と相性が良く、『高付加価値×中国の巨大市場』の組み合わせで利益を確保しやすい」という。
価格競争を避け、医療用・業務用など利益率の高い領域へ。
中国メーカーに部品・技術を供給するモデルが拡大。
沿岸部は競争が激しいため、内陸部での拡販を進める企業が増加。
開発・設計の現地化。
その上で「市場規模の魅力は依然大きい」とし、「意思決定のスピードを上げ、中国市場の変化に対応すべきだ」と謳っている。

<評者プロフィール>
1971年時事通信社入社。ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。Record China社長・主筆を経て現在同社相談役・主筆、『日中経営者』顧問。日中経済文化促進会会長。東京都日中友好協会特任顧問。著著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」など。
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