岡部純也 ZO MOTORS株式会社 商用車営業部部長
日本品質をチャイナスピードで

アジア最大級の業界イベントである「ジャパントラックショー2026」が盛況のうちに閉幕した。会場では、ZO MOTORS(大象自動車)が、いすゞ、三菱ふそう、日野と並ぶトップメーカーとして紹介され、新型EVトラック「ZM5」が初披露され注目を集めた。

「日本品質」は安全・安心の代名詞であり、日本市場には独自の厳格な参入基準が存在する。そんな中、海外資本のZO MOTORSが日本市場を開拓し、消費者の信頼を勝ち得た要因とは何だったのか。本誌は、長年業界に携わり、デザイナーから営業職に転身したZO MOTORSの岡部純也商用車営業部長を取材し、EV市場の未来についてうかがった。

デザイナーから営業職へ

岡部氏は、自動車産業や機械加工業が盛んな群馬県の出身である。近畿大学工学部を卒業後、最初に携わったのは工業デザインの仕事であった。そこで、自動車業界との接点が増え、自動車部品や金型の設計・製作に従事するようになり、この分野で10年間経験を積んだ。

その後、故郷の群馬に戻り、日本企業で営業職に就いた。デザイナーと営業職というまったく異なる二つの職務経験が、岡部氏に多面的かつ客観的な視点をもたらした。「私にとって、これまでの職務経験は大きな財産になっています。デザインだけであれば、製品中心の視点になりがちです。一方、営業だけではデザイナーの考えが理解できない場合があります。現在私は、乗り心地と運用の両面に配慮することができています」。

岡部氏が以前勤務していたEVメーカーでも、商用EVの生産を試みたことがあったが、当時は「日本市場はEVを必要としているのか?」「EVは消費者にどのような恩恵をもたらすのか?」と、EVそのものに懐疑的であったという。当時の取り組みは、市場の開拓であり、将来に向けた土台づくりであったと捉えることができよう。その後、岡部氏はZO MOTORSと出会う。「市場シェアを拡大するだけでなく、効率的かつ健全な物流システムを構築する」との経営理念に強く惹かれたという。この理念は、岡部氏の「多面的かつ客観的なクルマづくり」という考え方と一致していた。

充電技術の開発から運用に至るまで、ZO MOTORSは商用車に関わるすべてのプロセスを体系的に統合し、一つひとつ改善に努めている。「物流は、ただ車が道路を走ればいいというものではありません。ZO MOTORS には、先見的なマクロの視点があります!」。内に秘めた落ち着いた口調から、強い誇りが感じられた。

消費者は「品質」をより重視

荷物を安全に時間通りに指定された場所に届けること――それが物流である。商用EVの分野においては、中国、日本、欧米の間で物流に対する基本的な考え方は一致している。しかし同時に、明確な違いもある。

日本以外の国々では、荷物を安全に時間通りに届けること、つまり結果が重視される。一方、日本においては、物流は単なる輸送手段ではない。トラックのオーナーにとって、トラックは大事な資産であり、家族のような存在と言ってもよい。購入に当たっては生産工程の細部にまでこだわり、使用に当たってはメンテナンスを怠らない。

「細部に対するこだわりは、日本企業の伝統的価値観の一つです」と岡部氏は語る。ドアを開閉する際の手の感触、運転席の操作性、内装の仕上がり具合など、些細なことがユーザーの評価を左右するという。「これが良いか悪いかは一概には言えませんが、日本のビジネス文化の特徴です」。こうした一見すると厳しすぎるとも思えるこだわりが、世界が認める「日本品質」ブランドを築き上げたとも言うことができる。

岡部氏は、物流業界向けEVの開発について、中国、欧州、米国、日本それぞれに強みがあるとし、「地域間の関係は競争関係ではなく補完関係にある」と指摘する。当然、いかなる新たな事物も決して順風満帆には運ばない。中国はEVの開発にいち早く着手し、大胆かつスピーディーに発展を遂げてきた。氏は、中国市場に関するネガティブな報道に対して、「中国は極めて大きな経済規模を有する国です。優れた企業もあれば、問題を抱えた企業もあります」と、冷静に受け止めている。

これまで日本の市場は、「メイド・イン・チャイナ」か「メイド・イン・ジャパン」かという二項対立的な見方をする傾向が強かった。しかし現在では、市場も消費者も理性的かつ客観的な捉え方をするようになり、製品の品質や事業運営、さらにはクオリティやエネルギー効率に関心が移りつつある。

ZO MOTORSのコアコンピタンス

岡部氏は「物流システム全体を、高速かつ安全かつ健全に機能させる車づくりをすることです」と、ZO MOTORSのコアコンピタンスを端的に表現した。車の販売は、ZO MOTORSにとっての最優先事項ではないという。物流とは、車を1台、10台、100台と増やしていくことではない。ZO MOTORSは、物流システム全体をいかに効率的かつ健全に機能させるかに重点を置いている。

ZO MOTORSは、日本市場の特性を踏まえ、「日本現地にて設計を行い、日本品質の基準に則り、中国で組み立てる」というモデルを採用し、綿密な調査と度重なる検証を経て、日本の市場に適した車づくりを進めている。また、日本の商用車市場にあっては、EVトラックの納車までに時間を要するケースも少なくないが、ZO MOTORSは独自の生産体制によって、日本の厳格な基準を満たしながら、日本国内で十分な在庫を確保している。

「数年前までは、日本の消費者は『メイド・イン・チャイナ』に多少の懸念を抱いていたかもしれませんが、今では、そうした状況はほとんど見られません」。市場はすでに明確な答えを示している――「メイド・イン・チャイナ」抜きでは、日本の多くの経済活動は立ち行かないのである。商用EVの分野では、車両のオーナーは同時に事業者でもある。だからこそ、彼らは世界のサプライチェーンにおいて中国が果たす比類なき重要な役割を、一般消費者以上に理解している。

また、ZO MOTORSは航続距離や積載量といった表面的な数字をむやみに追い求めるのではなく、部品供給やメンテナンスなどのアフターサービスに重きを置いている。埼玉県戸田市に、十分な部品在庫を備えた24時間体制の「アフターサービステクニカルサポートセンター」を設け、48時間以内に車両が稼働できるよう、迅速かつ効率的なサポートを提供している。

さらに、ZO MOTORSでは、車両のオーナーから実際の走行データを収集しているが、先行投入された中型EVトラック「ZM6」は、1日の走行距離が60~70㎞の条件下で、電力消費量が約25%という優れた実績を示し、日本の都市物流や短距離配送のニーズに十分対応できることを証明した。

高まる注目と評価

盛況のうちに閉幕したジャパントラックショー2026では、並行して一連の特別講演会が開催された。岡部氏がZO MOTORSを代表して講演を行い、商用EV市場の展望について語った。会場は早々に満席となり、活発な意見交換が行われ、和やかな雰囲気に包まれた。岡部氏は「数千社のお客様と数万人の来場者から、熱意あふれる前向きな反響を頂戴し、大変貴重で価値ある経験でした」と振り返る。

今回の国際トラックショーで、ZO MOTORSは「地域配送」「拠点間輸送」「固定ルート配送」「構内コンテナ輸送」など、異なる物流ニーズに対応した3つの新型モデルを出展した。中でも小型電動トラック「ZM5」は、日本で例を見ない技術や設計を数多く採用した注目のモデルである。

「満を持しての登場ですね。技術がここまで成熟しているとは思いませんでした」。「1台のEVトラックで、これほど多様なニーズに対応できるとは驚きです」。会場で寄せられたこうした声に、岡部氏は大きな手応えを感じている。今回の出展によって、商用EVに対する理解と認知度を高めることができ、ZO MOTORSに寄せられた高い関心は、新型モデルを市場展開する上で、大きな自信になったという。

「海運業界では電動化が進み、建設現場も充電設備の設置により、建機の電動化が可能になっています。しかし、商用EVの普及には、まだ乗り越えるべきハードルがあります」。岡部氏は、依然としてEVに対して疑念をもち、様子見の姿勢をとる消費者が少なくない中、対面での交流や講演を通じて誤解が解けた人も少なくないと感じている。

「急速に進むIoT社会は物流に大きく依存しており、輸送能力はきわめて現実的な課題になっています」。今回ZO MOTORSが投入した小型EVトラック「ZM5」は、排出ガスゼロで騒音もなく、狭い住宅地でも自在に走行でき、夜間配送にも適しているため、輸送力不足という根本的課題を解決する可能性を秘めている。岡部氏は、ZO MOTORSは、日本における商用EVの普及に大きく貢献できると強い自信をうかがわせた。

取材後記

革新的技術をテーマに始めたインタビューであったが、岡部氏は厳密かつ現実的なデータに基づき、商用EVの新たな展望を語ってくれた。ZO MOTORSのように当事者意識をもって、ものづくりに真摯に向き合い、信義を重んじる企業が力を結集していくことで、環境に優しく、安全で持続可能な世界が実現されていくのである。