検査機関から見た 日本の食の安全
食品用器具・容器包装及びおもちゃの輸入

これまで食品そのものの輸入に関する食品衛生法上の規制について解説してきた。第4回は食品ではなく、食品に接触する器具・容器包装と、食品衛生法の対象となるおもちゃの輸入について取り上げる。食品衛生法は食品だけを対象とする法律と思われがちだが、食品の安全性に影響を及ぼすこれらの製品にも幅広く適用される。直近の令和6年度輸入食品監視指導統計によれば器具・容器包装、おもちゃの届出件数は88万件にも及ぶ。その多くは中国より輸入されており、両国間における重要な貿易商材である。

器具容器包装とは?

食器や調理家電、キッチン用品、さらには食品の包装資材を総じて器具・容器包装という。食品衛生法第4条では、食器、割ぽう具、食品に直接接触する機械や器具等を「器具」、食品や添加物を入れ、又は包み、そのまま引き渡すものを「容器包装」と定義している。これらは食品そのものではないが、食品に直接接触するため、輸入時には食品等輸入届出の対象となり、安全確認のため試験成績書等の提出が求められる。

器具・容器包装の材質は陶磁器、ガラス、ほうろうびき、ステンレス、アルミニウム、各種プラスチック、ゴム、木、竹、紙、不織布など多岐にわたる。器具・容器包装の規格基準は、食品への有害物質の移行を防ぐことを目的としており、例えば金属製品については鉛やアンチモンの含有量、ガラス・陶磁器・ほうろうびき製品については鉛、カドミウムの溶出量が規制されている。また合成樹脂製品では材質ごとの個別規格が定められ、溶出試験や材質試験によって基準適合性を確認する。

 

ポジティブリスト制度の完全施行

食品用器具・容器包装における近年最大の制度改正がポジティブリスト(PL)制度である。欧米諸国における制度との国際整合を図るための改正とされ、従来のネガティブリスト方式が禁止物質を定めていたのに対し、PL制度では安全性評価を受けた物質のみ使用を認める。2018年の食品衛生法改正を受けて2020年に施行され、5年間の経過措置を経て2025年6月に完全施行された。

さらに事業者間での情報伝達も制度化された。原材料メーカー、加工業者、容器包装メーカー、食品メーカーがサプライチェーン全体で適合情報を共有しなければならない。輸入事業者も海外サプライヤーから適合証明書やコンプライアンス宣言書を取得し、日本の制度への適合を確認する必要がある。

GMP導入の重要性

制度を実効性あるものとするためには、製造段階における管理が重要である。そのため器具・容器包装の製造事業者に対して適正製造規範(GMP:Good Manufacturing Practice)に基づく管理が求められている。GMPとは、製造工程における衛生管理、原材料管理、設備管理、品質確認、記録保存などを体系的に実施する仕組みである。特に輸入品では海外メーカーの管理状況が見えにくいため、価格だけでなく品質保証体制や法令対応能力も含めて仕入先を評価することが重要である。

食品衛生法が対象とするおもちゃ

食品衛生法は乳幼児向けのおもちゃも規制対象としている。乳幼児がおもちゃを口に入れたり舐めたりすることによる有害物質への曝露を防ぐためである。食品衛生法では、他法令等の規定を参考に実務上6歳未満の小児を乳幼児と解し、おしゃぶり、歯がため、積み木、人形、ぬいぐるみ、ボール、折り紙、うつし絵、アクセサリーがん具など幅広い製品を「指定おもちゃ」に指定し、規格基準を定めている。

指定おもちゃには重金属や可塑剤に関する厳しい基準が設けられている。例えば塗膜についてのカドミウム、鉛、ヒ素などの重金属規制の他、可塑剤として使用されるフタル酸エステル類については、指定おもちゃに対してその一部の物質の含有を禁止、乳幼児が口に接触する用途においてはさらに厳しい規制を適用している。ぬいぐるみなども製造基準として使用する着色料や溶出性に関する基準適合が必要となるため、これらの商品を雑貨と同じ感覚で安易に輸入すると想定外のコストや納期遅延を招く可能性がある。

 

経営者が認識すべきリスク

器具・容器包装やおもちゃは、雑貨、インテリア用品、家電、文具などと同じ流通チャネルで販売されることが多く、食品関連事業者以外が取扱うことも多い。近年はEC市場の拡大に伴い、海外プラットフォームから直接仕入れた商品を国内販売する事業者も増えているが、法令違反が判明すると輸入停止や回収、行政指導、信用失墜などのリスクを招く。原材料、製造工程、サプライチェーン全体を含めたコンプライアンス体制が求められている。

 

食品用器具・容器包装とおもちゃは食品輸入とは異なる分野に見えるものの、人の健康に直接関わる製品として食品衛生法の厳格な規制を受けている。特にPL制度の完全施行により、安全性を証明する責任が事業者に強く求められる。輸入事業者や経営者は、海外サプライヤー任せにするのではなく、自ら規格基準を理解し、適切な情報伝達と品質保証体制を構築することが重要である。

次回は日本からの食品の輸出について解説をする。