日中間の政治状況は高市首相の「台湾有事発言」を機に厳しい状況が続くが、経済関係は活況を呈している。世界最大の消費市場・中国の需要拡大を見込み、新規進出や事業拡大を図る日本企業が飲食・小売り・サービス業を中心に相次いでいる。連載企画で過去・現在・未来を深掘りする。
ジェトロ(日本貿易振興機構)の2024年度海外進出日系企業実態調査によると、中国で事業拡大を志向する企業は小売業で50%、販売会社では31%に上った。拡大の理由としては、いずれも「現地市場ニーズの拡大」が最多。引き続き、需要拡大を見込んだ事業拡大意欲が旺盛なことがうかがえる。
ユニクロ中国店
スシロー中国店
中国大陸への進出で先行する日系の小売り企業は、ユニクロと無印良品。ユニクロが中国大陸1号店をオープンしたのは2002年で100店舗達成までに約9年、無印良品の1号店は2005年で100店舗達成まで約8年かかった。スシローの1号店オープンから100店舗達成までの期間は約5年と速いペースで展開が進んでいる。現在の中国大陸の店舗数はユニクロが881店舗、無印良品が437店舗。中国大陸での成功は、日本の小売り企業の中国大陸での可能性を改めて確認した格好だ。
この他進出が活発化した分野としては、アウトドア(キャンプ、ゴルフ、釣り、ウインタースポーツなど)と外食が挙げられる。新型コロナウイルスの影響で遠距離の移動が制限される中、近場で楽しめる娯楽として人気となった。所得にゆとりがあり、趣味へのこだわりを持ち、質の良い商品を求める層が主な顧客となっている。中央・地方政府も産業振興のため政策的に後押ししているという。
日本企業の進出・事業展開事例をみると、中国への渡航にビザが必要などの制約があった中でも、多くの企業が中国の消費分野での進出・展開を進めていることが読みとれる。
<飲食>くら寿司、スシロー、はま寿司、高級食パン店「銀座に志かわ」、とんこつラーメン店「ラー麺ずんどう屋」、牛肉専門店「肉のヤマ牛」、居酒屋ワタミが1号店をオープン後に急拡大。
<アウトドア>ヨネックス、スノーピーク、デサントなど、キャンプ用品やアパレルなどの製品だけでなく、レストラン・カフェなどのサービスを通して、自然指向の顧客を狙う。
<玩具、ホビー、コンテンツ、ライフスタイル>BANDAI SPIRITS、金子眼鏡、蔦屋書店、コクヨ、ロフト、イオンモール、ニトリなど。中国大陸で急拡大。各社とも現地の消費者を惹きつけ成功している。
これら民間企業に比べ遅れていた政財界人の中国大陸進出への模索も始まっている。
関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)は4月18日の記者会見で、日中関係の緊張化を踏まえて「関西経済界が築いてきた中国とのパイプを細くしてはならない」と言明。「中国は最大の貿易相手国で一衣帯水の関係だ」と指摘。大規模な訪中団の派遣に意欲を示した。中国人観光客が激減するなど関西経済への悪影響も懸念されている。
自民党の西村康稔選挙対策委員長は5月2日、北京を訪問し、ロボット開発や自動運転に関する現地企業などを視察した。党四役の訪中は高市早苗政権になってから初めて。ヒト型ロボットを開発する宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)を視察し、中国のロボット産業は進化している」と述べた。
一方、日中韓3か国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は5月3日、財務相・中央銀行総裁会議をウズベキスタンのサマルカンドで開催。共同声明で「中東における紛争の激化は地域経済の見通しに対する下方リスクを大きく高めている」と明記した。米国とイスラエルによるイラン攻撃を念頭に、中東に原油輸入などを頼るアジア諸国の成長率下振れやインフレ加速への懸念を共有した。
同地で開催されたアジア開発銀行総会に合わせて開かれ、片山さつき財務相が中国や韓国の財務相とも対話を重ねた。
日本経済界の訪中も計画されている。日本国際貿易促進協会(会長・河野洋平元衆院議長)の代表団が6月21~24日に訪中する。習近平指導部との面会を模索している。中国国際貿易促進委員会が主催する大規模な国際見本市「中国国際サプライチェーン(供給網)促進博覧会」にあわせて訪中する。
日中両国間が政治家の発言により緊張する局面こそ対話が必須。トップ同士や閣僚、事務レベルはもちろん、議員や民間の交流が重要で、信頼醸成が求められる。
2026年11月に中国深圳でAPEC首脳会議が開催され、習近平中国国家主席、トランプ米大統領が出席する。高市首相はこの首脳会議で習氏とのトップ会談を模索、日中間の懸案解決への道筋を探る考えだ。

<評者プロフィール>
1971年時事通信社入社。ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。Record China社長・主筆を経て現在同社相談役・主筆、人民日報海外版日本月刊顧問。日中経済文化促進会会長。東京都日中友好協会特任顧問。著著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」など。
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