自動車マーケティングは国内目線からグローバル目線へ
海外インフルエンサー3人が語る中国車

中国自動車工業協会がこのほど発表した最新の統計によると、今年7月の自動車輸出台数は前年同期比81.3%増の104万3000台となった。このうち、新エネルギー車は同145.5%増の55万3000台に達し、中国の自動車輸出台数は2カ月連続で100万台を突破した。

中国車のグローバル展開が進む中、そのマーケティングも「国内目線で中国車を語る」段階から、「グローバルな視点で中国車を評価する」方向へとシフトしている。中でも海外のインフルエンサーは、現地の消費者に近い視点から情報を発信し、高い拡散力も備えていることから、中国車の海外マーケティングにおける重要な担い手となっている。

海外のインフルエンサーは中国車をどう評価し、中国の自動車メーカーをどう見ているのだろうか。3人の声を聞いてみよう。

オーストラリアの消費者の関心は、「中国車を買うかどうか」から「自分に合った車種はどれか」へ移りつつある。

オーストラリアのインフルエンサートム氏

ドイツのインフルエンサーノルディック氏

スペインのインフルエンサーデ・ラ・クアドラ氏

高まる中国車への信頼

 「一般の人と同じように、まずは体験してみよう」――オーストラリア出身のグルメブロガー、トム氏は、食べることが大好きで、新しいものへの好奇心も旺盛だ。動画での決まり文句は「レッツゴー!」。この一言で、動画は一気に盛り上がる。新しいレストランで料理を味わうときも、新しい車に乗り込む時も、その純粋な好奇心が画面越しに視聴者を引きつける。

 初めて中国車に触れたとき、トムは意表を突かれた。大型ディスプレー、サラウンドビューカメラ、運転支援システム――。高級車にしか搭載されていないと思っていた機能が、すべて備わっていたのである。彼は「脳内のソフトウェアを更新する必要がある」と気付いた。

 グルメブロガーであるトムは、この「意外性」を画面の向こうの視聴者にどう伝えるべきか考えた。

 「例えばレストランを紹介するなら、5分間説明するより、実際に味わってもらうのが一番です」。自動車についても、ショールームで仕様を読み上げるのではなく、どのように動き、どれほど実用的なのかを視聴者に直接見てもらう必要があると話す。

「視聴者は、『この車は素晴らしい』という言葉を聞きたいわけではありません。実際に運転した感想や走り、内装、機能が本当に役立つのか、そして私自身が本当に中国車を買いたいと思ったのかを知りたいのです」。

 当初、コメント欄は「中国車は老舗メーカーに太刀打ちできるのか」といった声であふれていた。ところが次第に、「中国車にこんな機能があるとは思わなかった」という声へと変わっていった。

 この変化は、トム自身の車選びに対する考え方も変えた。「以前は、いくつかの有名ブランドしか頭にありませんでした。しかし今は、車そのものが優れているかどうかを重視しています」。技術、快適性、実用性、操作性の面で自分の求める条件を満たしていれば、購入を検討したいという。

「結局のところ、ボンネットにどんなエンブレムが付いていようと、車に乗るのは私です。運転席での体験が最も大切なのです」。

 トムは、中国車の海外展開における最大の課題は、消費者の信頼を得ることだと考えている。現地の人々は、子どもの頃から慣れ親しんできた自動車ブランドに親近感を持ち、厚い信頼を寄せている。一方、中国ブランドはゼロから信頼を築かなければならない。それでもトムは、優れた製品はいずれ必ず評価されると信じている。

現在、オーストラリアの消費者の関心は、「中国車を買うかどうか」から「どの車が自分に最も合っているか」へ移りつつある。トムは「風向きは大きく変わった」と感じている。

コメント欄の声は、「中国車は本当に優れているのか」から「どこで試乗できるのか」へと変化している。

ドイツで中国車の試乗を
望む消費者が増加

ドイツ人インフルエンサー、ノルディック氏の動画はインパクトに富んでいる。写真撮影を趣味とする彼の動画では、愛車を魅力的に撮影する方法を実践的に学ぶことができる。また、友人と車で出かけ、その乗車体験を日常的に紹介している。

自動車インフルエンサーとして、生産国ではなく、製品そのものを評価することを常に心がけている。初めて中国車に触れたとき、「想像以上だ」と感じたという。最も印象に残った技術を尋ねると、特定の技術や機能ではなく、インテリジェント音声制御、ソフトウェアとハードウェアのシームレスな統合、ユーザーインターフェースの反応速度などを含む、総合的な体験だと答えた。

「そのとき、中国の自動車産業が飛躍的に発展していることを実感しました」。現在、ノルディックはインフルエンサーとして、中国の自動車メディア「懂車帝」と契約している。動画に中国車が頻繁に登場するようになると、コメント欄にも変化が表れた。

「私のフォロワーは、中国車に強い関心を持っています」。コメント欄の声は、「これらの車は本当に優れているのか」から「どこで試乗できるのか」へと変化しており、非常に興味深い傾向だと話す。

ノルディックは動画の中で、自らの体験を客観的に伝える一方、中国の自動車メーカーが海外展開を進めるうえでの課題も指摘している。

「中国車がドイツ市場へ参入するうえで、最大の課題は技術ではありません。多くの製品は、すでに高い競争力を備えています。本当の課題は、消費者と長期的な信頼関係を築くことです」

そのためには、信頼できるサービスネットワーク、スムーズな部品供給、長期的なソフトウェアサポートに加え、現地市場に根付くという明確な姿勢が必要だと考えている。

ドイツは伝統的な自動車大国であり、その消費者から評価を得ることは容易ではない。冷静で厳しい目を持つ消費者からの評価は、どれほど華やかな広告よりも重みがある。

「中国の最新モデルに試乗したことを、フォロワーたちは羨ましがっている」

スペインで高まる
中国車への評価

 スペインの旅行写真家、デ・ラ・クアドラ氏と中国車との縁は長い。2008年には、すでにベネズエラで中国車を体験している。

「そのとき、私は少なからず衝撃を受けました。それまで抱いていた『中国製』のイメージとは違っていたからです」。

その後、特にインフルエンサーとして知られるようになってからは、多くの中国車に触れる機会を得た。「BYD、Xiaomi、AION、吉利など、各社の車を一通り体験しました」という。

10年前、スペインの視聴者に中国車を紹介し始めた頃は、安全性や快適性の説明に多くの時間を割いていた。現地では、中国車の生産工程や品質管理について、ほとんど知られていなかったためだ。しかし現在は、運転体験や中国車の先進技術を中心に紹介している。

彼の中国車に対する見方を大きく変えたのは、中国のナビゲーションシステムだった。「中国車のナビゲーションシステムを初めて体験したときは、本当に驚きました。反応が速く、音声は明瞭で、案内も正確でした。それまで経験したことのない高い技術力で、まさに最先端だと感じました。さらに、快適なシートと直感的な操作性も備えており、一見複雑に見える機能も、数秒で使いこなすことができました」。

デ・ラ・クアドラは、こうした新たな体験を、より多くのスペインの消費者に伝えたいと考えている。

「先日、自動車メーカーのイベントに参加するため中国を訪れました。私が中国車の最新モデルに試乗したことを、フォロワーたちは羨ましがっていました」。

スペインでは中国車への評価が高まりつつある。依然として様子見の姿勢をとる消費者もいるが、中国車が広く普及するのは時間の問題だと考えている。

最近では、身近な友人も中国車に買い替えたという。「数年前まで、私の周囲にも中国車に懐疑的な人がいました。しかし、実際に試乗し、その魅力に引かれる人が増えています」。

消費者が実際に体験すれば、中国の自動車産業の成長の速さに驚くに違いないと語る。中国の自動車メーカーは、現地の消費者により多くの試乗機会を提供すべきであり、それが最も効果的なマーケティング戦略になると考えている。

記者メモ

 中国車をどう評価し、国際マーケティングをいかに展開すべきか。

中国の自動車メディア「懂車帝」がこのほど発表した報告書によると、中国国内のインフルエンサーが「運転性能、使いやすさ、購入する価値があるか」といった製品そのものに関する話題を重視するのに対し、海外のインフルエンサーは「文化、ライフスタイル、技術体験」により高い関心を寄せている。

トム氏は「語るより見せる」スタイルで、オーストラリアの消費者に中国車の技術力を伝えた。ノルディック氏は客観的なレビューを通じて、ドイツの消費者の厳しい目に応えた。デ・ラ・クアドラ氏は長年にわたる自身の体験を通じて、中国車が「人を驚かせる車」から「購入を検討する車」へと変化していく過程を伝えてきた。

海外のインフルエンサーが、現地の消費者の視点から中国車の技術やデザインの進化、さらには文化の違いを語るようになれば、その発信は単なる製品レビューを超えたものとなる。

一見すると、情報発信の手法が変わっただけのように思えるかもしれない。しかし、この変化は、中国自動車産業の海外展開が新たな段階に入ったことを物語っている。すなわち、製品の輸出からブランド認知の確立へ、さらには文化を通じたコミュニケーションや価値観の共有へと進展しているのである。

今後、世界各地で中国車を目にする機会は、ますます増えていくだろう。海外の消費者が中国車の品質を実感するにつれ、より多くのインフルエンサーが、中国車とその背景にある中国のものづくり、イノベーション、文化について語っていくに違いない。