岳増光中国画作品展が古都・奈良で開幕

「山川異域、風月同天」――住む国は違っても、同じ空の下で風月を共にしている。筆と墨の世界にも国境はなく、文化の流れはつながっている。

8月8日、中日の芸術交流と文化対話を目的とする「風月同じ、墨を以てつなぐ――岳増光中国画作品展」が、奈良の九思アートセンターで開幕した。

本展は中国画学会、九思アートセンターが共同で主催する。奈良に開設された同センターにとって、今回が最初の展覧会となる。水墨画を通じて、中日両国に共通する美意識や文化のつながりを紹介している。

中国と日本は海を隔てた隣国として、千年以上にわたり交流を重ねてきた。古都・奈良には、唐代に中国から伝わった文化の面影が今も色濃く残っている。

水墨画は中日両国に共通する芸術であり、そこには両国に通じる美意識や感性が息づいている。また、芸術を通じた対話と相互理解を促す架け橋にもなっている。

今回の展覧会は、唐代に中国文化が日本へ伝わった歴史を振り返るとともに、伝統的な水墨画を現代へとつなぎ、中日の芸術交流の新たな可能性を探るものである。

本展では、現代中国を代表する画家の一人、岳増光氏の新作を展示している。展示作品は、山水画と、奇石を題材にした「賞石」シリーズの二つに大別される。

岳増光の山水画は、隋・唐代の青緑山水の華やかさと、宋代絵画に通じる禅の趣を受け継いでいる。そこに現代的な感性を重ね、重厚な筆致で、静けさと奥行きのある風景を描き出している。

岳増光は、墨の濃淡や筆の乾湿を巧みに使い分け、「痩・皺・漏・透」と呼ばれる奇石独特の美しさを描き出している。作品には、石を通して自らの心と向き合い、そこに思いを託す中国文人の精神と美意識が込められている。

日本の風土との出会いは、岳増光が培ってきた中国画の伝統に、新たな広がりをもたらした。作品には、中日の山水の趣と、古今の文人たちが自然に寄せた思いが溶け合っている。

開幕式では、中国芸術研究院研究員で「中国画学会・日本」会長の韓学中氏があいさつし、岳増光の芸術の歩みと作品の特徴について解説した。

韓学中は、「岳増光氏の作品は、伝統に根差しながら新たな表現を追求し、古典の趣と現代的な感性を兼ね備えている。山水画と奇石を描いた作品には、地域を超えて共有される東洋芸術の精神が凝縮されており、中日の現代水墨画が互いに学び合うための好例となっている」と評価した。

岳増光は、今回の展覧会に込めた思いについて、「中日の文化は共通の源を持ち、互いに影響を与えながら発展してきた。文化交流は、両国の人々の心の距離を縮め、相互理解を深める大切な架け橋である。水墨画は、翻訳を必要としない東洋共通の言語だ。今回の個展を機に、筆墨を通じて中日の芸術交流をさらに深めたい。千年にわたり受け継がれてきた東洋文化が、両国の交流を通じて次世代へ継承されることを願っている」と語った。

九思アートセンターの高宇昂代表は、「開館記念展となる今回は、岳増光氏の新作から選りすぐりの作品を展示した。学術的な価値と鑑賞する楽しさを兼ね備えた展覧会である。これを出発点に、中日芸術交流の場を築き、国際美術展や学術交流を継続的に開催していきたい。東洋美術の魅力を、より広く世界に発信していきたい」と語った。

本展のテーマは「風月同墨、文脈共承」。風月と筆墨を共にし、文化の流れを受け継ぐとの思いが込められている。作品は、山や石に詩情を宿し、一筆一墨に画家の創作への思いを映し出している。

奈良で開催された本展は、岳増光の新作を紹介する個展であると同時に、水墨画を通じた中日文化交流の場でもある。今後も優れた東洋美術が海を越え、中日両国の文化交流がさらに深まることが期待される。

 

主な出展作品

『渓雲飛瀑』68cm×68cm

『青鸞沐朝暉』68cm×68cm

嶺含煙色』68cm×68cm

『賞石』2点 各68cm×45cm

 

作家略歴
岳増光(がく・ぞうこう)。字は明覚、号は万峰堂主人。河南省沈丘県出身。15歳の頃から挿絵や連環画(中国の伝統的な絵物語)を手がけ、作品を発表してきた。中央美術学院研究生班修了。中国国家画院美術館公共教育部元主任。現在、「中国画学会・日本」副会長を務める。中国美術家協会、中国壁画学会、中国工筆画学会の各会員で、中央美術学院訪問学者。第13回、第14回全国美術作品展覧会に作品を出展したほか、省・国家レベルの美術展にも多数参加している。著書・作品集に『水墨前沿――岳増光』『紙上雲煙――岳増光山水画作品集』などがある。近年は北京、青州、フフホト、大連、濰坊、東莞、新昌、寧波、煙台、奈良などで個展を開催している。