春の陽気に包まれた3月、千葉県館山市。館山湾を望む高台に広がる館山ポピーランド内の貸別荘「ナウラ館山」で、株式会社Second・Lifeの名倉洋二社長に話を聞いた。同社は2016年創業、「第二の人生を笑顔で過ごせるように」という思いを掲げ、別荘販売事業を軸に展開してきた。別荘を「体験から購入へ」とつなげる独自モデルについて、名倉社長は「中国の企業家にもぜひ取り入れてほしい」と力強く語る。その事業の背景と今後の展望について伺った。
―― 創業の原点と経営観についてお伺いします。
名倉 10年ほど前のことですが、友人のご両親が別荘を所有しており、処分に困っているという相談を受けたのがきっかけです。その売却を手伝い、現地の不動産会社にも持ち込みましたが、「取り扱っていない」と断られるなど、非常に苦労しました。
この経験から、同じように困っている方が他にもいるのではないかと感じ、不動産事業に参入しました。空き家対策の一環として、別荘を持ったまま放置されている物件に着目し、そこにビジネスチャンスを見出したことも大きな理由です。
―― 社名の「Second・Life」に込められた思いについてお聞かせください。
名倉 別荘を購入する方、売却する方の双方が「第二の人生を笑顔で過ごせるように」という思いを込めています。売り手にとっては手放すことで新たな人生が始まり、買い手にとっては新しい時間を過ごす人生が始まる。その両方を支える意味で「Second Life」と名付けました。
―― 別荘販売事業の強みと戦略について、どのようにお考えでしょうか。
名倉 当社の強みはフットワークの軽さです。現地での案内や、別荘を所有されているオーナー様へのアプローチに力を入れています。また、日本人だけでなく海外のお客様にも対応できる体制を整えている点も特徴です。都市部の不動産会社では別荘地を扱わないケースも多いため、その点で差別化ができています。
さらに、物件の総合プロデュースを行っている点も強みです。買い手の視点に寄り添い、リフォームや清掃、草刈りなどを行ったうえでご案内しています。現地の業者は物件をそのまま案内することも多いですが、当社では必ず整備してからご案内します。その違いはお客様からも評価されています。
また、当社は別荘の売却・管理・リフォームを一体で行い、一気通貫のサービスを提供しています。いま、不動産は「不動」ではなく、「負」の動産になっているケースが多いと感じています。そうした「負の動産」に新たな価値を与え、再生するのが当社の役割です。言い換えれば、他社が売れないものを売ることが当社の強みです。
顧客層については、日本人に加え海外のお客様にも対応しており、翻訳・通訳が可能なスタッフも在籍しています。コロナ禍以降、リモートワークの普及によって地方への関心が高まり、二拠点生活を選ぶ方が増えたことで、日本人顧客も大きく増えています。
戦略としては、物件を選ばず預かり、価値を高めて市場につなげることです。一般の不動産会社が扱わないような物件にも向き合い、再生していく。その積み重ねが当社の強みになっています。
―― ナウラ貸別荘シリーズについてお聞かせください。
名倉 当社は2016年の設立以来、別荘専門で事業を展開してきました。一般の不動産会社が扱わない分野にあえて取り組み、空き家問題の解決や、地域資源の再活用を通じた社会貢献も意識しながら事業を進めてきました。
その中で生まれたのが、ナウラ貸別荘シリーズです。「ナウラ」はフィンランド語で「笑う」「笑顔」という意味です。この場所に訪れた方が、心からくつろぎ、笑顔で帰っていただけるようにという思いを込めて名付けました。
貸別荘事業を始めた理由は、国内外のお客様にまず滞在していただき、別荘の魅力を体感してもらうためです。写真や情報だけでは伝わりにくい空間の魅力や、時間の流れ方、自然との距離感といった価値を体感していただくことで、購入につながると考えています。いわば「体験を入口にした不動産ビジネス」です。
ナウラシリーズは3年前、コロナ禍の時期にスタートしました。移動や対面が制限される中でも、滞在を通じて別荘の価値を実感していただき、その後の購入へとつなげていくという戦略です。こうした実体験が、購入の意思決定に大きく影響すると考えています。
今後はこのシリーズを全国に展開し、各地域の特性を生かしながら、別荘をより身近な存在にしていきたい。単なる物件の提供にとどまらず、「滞在」「体験」「購入」へとつながる流れを整え、より多くの方に別荘という選択肢を提案していきたいと思います。
―― 地域への取り組みについて教えてください。
名倉 現在、放置された別荘地や荒れた土地が増えています。そうした場所を一つ一つ再生し、地域全体をきれいにしていくことを目指しています。
その第一歩として、茨城県鉾田市と協働でクリーン活動を開始しました。地元住民の方々とともに、空き家や放置地を整備していく取り組みです。行政とも連携しながら、地域の課題を解決することが、結果として街全体の価値向上につながると考えています。
―― アパレル業界で中国と関わられていたご経験も含め、中国ビジネスの歩みと今後の市場について、どのように見ていますか。
名倉 中国に関わり始めたのは1990年代後半から2000年代初頭です。当時はアパレル関連の仕事を通じて中国に関わっていましたが、現地では若い経営者が多く、非常にエネルギーにあふれていました。将来、日本に不動産を持ちたいという意欲も強く、その志向を肌で感じていました。
現在ではその流れは現実のものとなり、日本で不動産を所有する中国の方も増えています。関心は依然として都市部に集中していますが、今後は居住や投資の選択肢として、別荘や地方物件へと広がっていく余地があると見ています。
日本は安全性が高く、資産の保有先としての信頼も厚い国です。都市部の価格が上昇する中、環境や滞在価値を重視する層にとっては、整備された地方やリゾートエリアは有力な選択肢となりつつあります。こうした流れを踏まえると、体験を起点に価値を伝える別荘ビジネスには、今後の可能性があると考えています。
―― これまでで最も困難だった局面は何ですか。
名倉 コロナ禍で対面販売ができなくなったことです。従来のように現地で物件をご案内することが難しくなり、売買も大きく停滞しました。しかし、その状況の中でVRカメラやSNSを活用し、非対面でも物件の魅力を伝えられる体制を構築しました。結果として、遠方や海外のお客様にも対応できるようになり、この取り組みは新たな強みとなりました。まさに「ピンチはチャンス」だったと捉えています。
―― 経営者に求められる資質について、どのようにお考えでしょうか。
名倉 ぶれない信念を持つこと、関わるすべての人を笑顔にすること、そして挑戦をやめないこと。この三つが重要だと考えています。変化の大きい時代だからこそ、目先の状況に左右されず、自分たちの軸を持ち続けることが必要です。そのうえで、新しいことに挑戦し続ける姿勢が、次の成長につながると考えています。当社も不動産にとどまらず、地域全体をプロデュースする視点で取り組んでおり、スタッフ全員で意見を出し合いながら、新たな施策を形にしています。
―― 最後に、起業家へのメッセージをお願いします。
名倉 前を向いて挑戦し続けること、そして後ろを振り返らないことです。迷ったときほど立ち止まらず、一歩でも前に進むことが大切だと思います。変化の激しい時代においては、正解を探すよりも、自ら道を切り拓いていく姿勢が求められます。挑戦を重ねる中でこそ、自分自身の軸や強みが見えてくるのではないでしょうか。
当社では、貸別荘という形で「体験から購入へ」とつなげるモデルを構築してきました。実際に滞在することで地域の魅力や暮らしの価値を実感していただき、その延長線上に不動産取得という選択肢を提示するものです。このモデルは中国の起業家にも応用可能であり、新たなビジネスのヒントとして取り入れていただければと思います。

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