中国の貧困脱却の物語は、資金やプロジェクト、産業振興といった視点から語られることが多い。しかし、雲南省・瀾滄県老達保村の李娜倮さんが選んだのは、まったく異なる道であった。彼女は外部に資源を求めるのではなく、村で人びとが日常の中で受け継いできた歌や踊りに着目し、それを地域の資源として生かしたのである。
李さんはラフ族の家庭に生まれ、幼い頃から歌と踊りに囲まれて育った。父親は国家無形文化遺産「芦笙舞」の伝承者である。こうした環境の中で育った彼女にとって、歌や踊りは生活の一部であった。そして次第に、それらは単なる文化ではなく、人々の暮らしを変える力を持つ資源にも成り得ると考えるようになった。
2013年、彼女は「老達保快楽ラフ演芸公司」を設立し、村人たちとともに、歌や踊りを舞台演目として形にしていった。当初は周囲の理解を得られず、「農業に専念すべきだ」という声も少なくなかった。それでも彼女は諦めることなく、一軒一軒村人を説得して回り、昼はともに農作業に励み、夜は灯りのもとで稽古を重ねた。やがて参加者は次第に増え、最終的には村の102戸すべてが加わるまでになった。
さらに彼女は、ラフ族の言語と現代音楽を融合させ、『快楽ラフ』『実在舍不得』『真心愛你』など30曲余りを創作した。これらの楽曲は村の外へも広がり、北京や上海、広州などの都市でも披露されるようになった。かつて山あいに響いていた歌声は、多くの人々に知られるようになり、村にとって確かな収入源にもなっていった。
公演の機会が増えるにつれ、老達保村には、公演鑑賞や民族文化の体験を目的とした多くの観光客が訪れるようになり、村では観光業が徐々に発展していった。村人たちは舞台出演だけでなく、観光客の受け入れや手工芸品の販売によって収入を伸ばし、かつての貧困村は、「全国文明村」「全国農村観光モデル村」と称されるまでに変貌を遂げた。
彼女はさらに、村の子どもたちにギターや舞踊を無償で教え、これまでに500人以上の「小さなパフォーマー」を育成してきた。また、周辺地域の芸能グループへの指導にも携わり、誰もが参加できる地域の文化活動として広げていった。
さらに、政策の伝達にも工夫を凝らした。人々に分かりやすく伝わるよう、政策内容をラフ族の歌に編み直して広めた。
中国には、同じように豊かな文化資源を持つ農村が数多く存在している。重要なのは、それらを「収入につながるチャンス」として捉え、活用できる人がいるかどうかである。変化は、必ずしも外からもたらされるものではない。自らの足元にある価値を見つめ直すところから始まるのである。
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