日本における輸入茶葉の検定実務

カロリーベースで約6割を海外からの輸入に依存している日本において、輸入食品は食生活になくてはならないものとなっている。

厚生労働省の令和6年度輸入食品監視指導統計によると食品衛生法に基づく輸入届出数は約246万件、届出重量は31,913千トンに上る。茶葉の輸入は貿易統計より26,031トン、輸入額は243億円であり、これは輸出量8,870トンの実に3倍となっている。日本は茶葉の生産・輸出国であると共にそれ以上に輸入国でもあると言え、その多くは中国からの輸入である。

販売又は営業上使用する食品等を輸入する場合は、その安全性確保の観点から食品衛生法(以下「法」という)第27条に基づき、輸入者に対して輸入届出の義務が課せられている。届出は輸入港、空港等の検疫所で受け付けており、食品衛生監視員が適法な食品等であるかの審査や、検査の要否の判断を行い、必要に応じ輸入検査等の指導が行われる。

輸入検査は法違反の蓋然性に応じいくつかのステップに分けられている。まずは多種多様な食品について幅広く監視し、必要に応じて輸入時検査を強化する等の対策を講じることを目的として行うモニタリング検査がある。国が年間計画を策定し、検疫所が収去を行うこの検査では、残留農薬や抗生物質、食品添加物、病原性微生物等、多様な食品衛生上のリスクを調査しており、その分析試験の一部は弊会のような厚生労働大臣の登録検査機関へアウトソーシングされている。

このモニタリング検査において残留農薬基準値を超過していることが確認されると、食品の種類、国・地域等を指定して検査頻度が引き上げられ、当該輸出者等を指定して自主検査を指導する等の検査強化が行われる。さらに法違反の蓋然性が高いと判断されると厚生労働大臣の検査命令に基づく命令検査に移行することとなる。命令検査では輸入の都度、貨物を保税蔵置場に留め置き、輸入者が費用負担し、登録検査機関による検査の結果、適法と判断されるまで輸入は認められない。一旦命令が発出されれば一定の期間違反がない状態が持続しないと解除されず、命令検査への移行は、食品等を輸入する輸入者にとって大きなコスト増、リスク拡大と言える。

弊会は厚生労働大臣登録検査機関として、これまでに多くの命令検査等の輸入検査を実施してきた。その経験から茶葉に関しては残留農薬の問題が最も重要であると考える。日本では2006年より残留農薬等のポジティブリスト制度(安全性が確認された農薬等をリストに掲載し、リストに載っていない物質の使用を原則禁止する制度)が導入された。導入直後は多くの輸入農産物等で違反事例が急増した。これまでに中国産緑茶のトリアゾホス(2007年)、台湾産ウーロン茶のブロモプロピレート(2006年)、カルバリル(2021年)、中国産ウーロン茶のフィプロニル(2013年)等で検査命令が発出されている。また、スリランカ産発酵茶のジウロン(2021年)、英国産発酵茶のエチオン(2021年)、インド産発酵茶のエチオン、アセフェート(2021年)など、様々な産地の茶葉製品から基準値を超える多様な農薬が検出されており、茶の輸入と残留農薬は切り離せない問題である。(厚生労働省HP「輸入時における輸入食品違反事例」より)幸いなことに2025年12月現在、茶葉に対する命令検査は台湾産ウーロン茶のカルバリルとインド産紅茶のヘキサコナゾールだけとなっており、中国産茶葉については命令検査、モニタリング検査強化ともにない。しかしながら他の国・地域での違反事例が後を絶たないことから、茶葉の輸入に当たっては今後も引き続き残留農薬の管理が重要と言える。

残留農薬の管理については、茶葉の生産地における適切な農薬使用管理が基本なのは当然であるが、茶畑の周辺からのドリフトなど想定外のリスクも十分考慮が必要であり、そのためには輸入前に幅広い種類の残留農薬を一斉に確認する一斉分析(スクリーニング検査)の実施が効果的である。弊会では輸入時のモニタリング検査項目をカバーする茶葉向けの残留農薬一斉分析パッケージメニューを用意しており、低コストでスクリーニングが可能である。

茶葉については農薬以外にも添加物の使用等に関する違反事例が発生している。スリランカ産発酵茶のスクラロース使用、英国産発酵茶のジクロロメタン使用、タイ産半発酵茶等の食用黄色5号使用等、いずれも製造者、輸入者の基準理解の不十分さが原因と考えられる。

食品衛生法では、輸入食品の法適合、安全性確保については、自ら知識、技術を習得し、検査の実施等必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされており、輸入者はその一義的責任を有していることを改めて認識していただくことが肝要である。食のグローバル化は今後さらに拡大・深化するだろう。弊会は分析、検査、コンサルティング等の業務を通じ貿易の円滑化に資することで、中国茶とそれを楽しむ豊かな文化の普及に貢献して行きたい。