バーゼル・パリを訪れた10月、グラン・パレでBodo Korsigと会い、取材は断続的に進められた。というのも、会場では互いにアート業界の知人と次々に顔を合わせ、そのたびに会話が弾んだからだ。
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Bodoは創作活動を始めた頃から、彫刻、ビデオ・インスタレーション、舞台デザイン、サウンドなどマルチに活動してきた。さまざまな媒体を通して、今われわれが暮らしている社会を凝視しながら、アートと社会のつながりや関係性にフォーカスしてきた。
また、文学者、とりわけ詩人をはじめ、ミュージシャンやダンサーなど、各分野の異業種のクリエーターたちとのコラボレーションも重ねてきた。
彼の注目するテーマは、恐怖、暴力、プレッシャー、死といった極限状況下における人間の行動をモデル化することにある。特に、単なる科学的な手法だけでは捉えきれない神経学的・認知的プロセスに強い関心を寄せ、生物学的決定論と人間の意識が交差するプロセスに注目してきた。それが作品の実験性と前衛性を形づくっている。さらに、生物学的身体、形而上学的シンボル、そして話し言葉の結晶化を用い、脳機能と人間の意識を表現するための新たな視覚言語の創出に尽力してきた。
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ほぼドイツとアメリカの現代アートの美術館で展示会を行うほか、イタリア、メキシコ、スイスなど多くの国で、毎年3、4回、個展およびグループ展を重ね、多くのアート・トークやシンポジウムを開いてきた。時には著名な評論家と、また、コラボレーションを行った異業種の人々とも対談している。
今年のサウンド・インスタレーション「Balance of the Invisible」は、野花が咲き誇る野原で剣道で対峙する男と女を描いた、スポーツとしての力の勝負をテーマにしているが、基準や体力の男女差を除いても、さまざまな意味が込められたビデオ作品だ。単純なスポーツ的な勝ち負けだけではない。そこには性別、力のバランス、そして暴力的な傾向が潜んでいる。
もう一つの今年の新作「Dialogue with Marcus Aurelius」は、作家の肉声で質問を問いかけ、哲学者の顔を借りたヒューマノイド的なAIがアルゴリズムな答えを返したかと思うと、それが一瞬にして粉粉に崩れ落ちる作品である。AGI時代における現実世界の崩壊を意味しているようにも見える。精神世界も身体性も含めて、である。2023年の映像作品は「Shattering Dreams」というタイトルである。蜘蛛が画面から急に大量にあふれ出ると、大概の人はその勢いに気持ち悪さや恐怖を覚える。密集して現れるもの、小さな虫に対する嫌悪感、あるいは恐怖症――それもまた人間と昆虫という異なる生命体の間の関係性を表している。人間は虫を怖がり、あるいは気持ち悪がるが、その逆はどうだろうか。虫からすれば、巨大な身体を持つ人間こそが恐怖の存在かもしれない。人によって、急に寄ってくる蜘蛛の集団への反応は異なる。子供たちははしゃぎだすこともあるが、そのさまざまなリアクションこそが、参加型であるこの作品の興味深いところだ。
「Surviving」というダンス・パフォーマンスが2021年にあり、息をする声だけを残し、男女の行為を彷彿とさせながら、関係性の変化によって、親密な関係が暴力的に変化したり、硬直して疎遠な関係になったり、さらには言葉の暴力である「暴言」へと変わり果てていく、その関係性の変化を表現しているようにも見てとれる。出会ったばかりの蜜月関係から、長い歳月を経て冷え切った関係になる。あるいはお金持ちになった男性社会のおじさんが、成功の勲章のように若い女性を消費する、家父長的な男性中心の社会。その中で、自分はどの立場に属しているのか。我慢している方か、我慢させられている側か。ダンス・パフォーマンスは深い。人間関係は確かに、世の中で最もサバイバルな関係性ではある。世の中のすべての人にやさしく、身内の人にだけ暴力的な人も少なくないのだ。「愚かだ」と叫ぶこのサウンドは、何を指しているか。人間の愚かさは、底知れぬものだ。
「Arrival」という映像作品は、三画面による映像で構成され、真ん中の画面は透明な海のイカにも見えるが、ばい菌や細胞が急変して「死」に向かうようにも見える。両側の煙を吐いている煙突は、変わらない日常を表している。セリフに何度も聞こえてくる「死」という言葉は、コロナ禍中に考えがちな「死」に対する思考を示している。
lost in though 2020, Felt, 400 x 400 cm アトリエ提供
restless in space 2018, Felt, 400 x 220 cm アトリエ提供
time crash 2023, Felt , 400 x 70 cm アトリエ提供
window of the mind 2018, Felt, each 160 x 140 cm アトリエ提供
ミニマルアートの大きな作品が、美術館の大きなスペースに余白をたっぷり残して飾られる早期の美術館展示作品は、黒が目立つ。空間にぶら下がる作品や壁掛けの作品の場合には、壁に移るシャドーが重視されることもある。
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アーティスト・イン・レジデンスで、ニューヨークやイタリア、そして北京での滞在も経験した。
美術館を中心とした収蔵も30件以上にのぼり、彼は前途が明るい天才肌の長身の作家である。次にどのような新作が生まれてくるのか、楽しみだ。
国際秩序はコロナ禍後に混乱気味にあり、先行きが不安な世の中だが、AGI時代にアーティストはどのような作品を提示すべきか。これが問題だ。

洪欣
東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。ダブルスクールで文化服装学院デザイン課程の修士号取得。その後パリに留学した経験を持つ。デザイナー兼現代美術家、画廊経営者、作家としてマルチに活躍。アジアを世界に発信する文化人。
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