産業インターネットは、製造強国づくりとネットワーク強国づくりを結ぶ重要な基盤であり、実体経済とデジタル経済の融合を支える中核インフラでもある。中国が新型工業化を進めるうえで欠かせない重要インフラと位置付けられている。
近年、中国では政府、企業、大学、研究機関、利用現場が連携し、産業インターネットの発展を後押ししてきた。その結果、関連分野では一定の成果が上がり、質の高い発展を遂げ、本格的な普及・活用の段階に入りつつある。業界関係者からは、このほど公表された「産業インターネットの質の高い発展を促進する実施意見」など一連の政策を背景に、産業インターネットの発展が新たな段階を迎えるとの期待が高まっている。
設備データのリアルタイム収集、AGV(無人搬送車)の自動走行、スマートカメラによる高速検査――工場のデジタル化が進む背景には、産業インターネットの活用がある。
工業情報化部のデータによると、中国の産業インターネットはすでに41の工業大分類、185の中分類に広がっている。産業インターネット関連産業の市場規模は1兆6000億元(約38.4兆円)を超え、工業付加価値を約2兆5000億元(約60兆円)押し上げた。「5G+産業インターネット」プロジェクトは2万5000件を超え、設備や製品を識別するデジタルIDの登録数は7400億件超、国家産業インターネット・ビッグデータセンターに集約された産業データは17億件を超える。また、工業インターネット産業連盟(AII)には2800を超える団体・企業が参加し、この分野で世界最大規模の産業エコシステムとなっている。
産業インターネットの急速な発展に伴い、製造業のデジタル変革も加速している。
遼寧省では、鞍鋼集団が情報通信技術を生産・管理の全工程に取り入れている。傘下の斉大山鉄鉱では、一体型スマート管理プラットフォームを構築し、中国で初めて露天鉱山の採掘から管理まで全工程のスマート化を実現した。これにより、鉄精鉱の製造コストは17%低下した。
江西省の金虎保険設備集団有限公司は、工場内の主要設備に分散していた生産データを統合し、金属家具業界向けの「5G+産業インターネット」プラットフォームを構築した。これにより、サプライチェーン全体のデジタル化も進んでいる。部門間の生産情報の伝達効率は50%向上し、製造工程の標準化率も18%向上した。
工業情報化部情報通信管理局の担当者は、現在、新たな科学技術革命と産業変革が進む中、人工知能、5G/5G-A、計算力ネットワークなどの技術が経済・社会の幅広い分野に浸透していると指摘する。製造業のデジタル化・スマート化が加速する中、産業インターネットは新たな段階を迎えている。
AIの産業分野での活用が広がる中、産業インターネットには、ネットワーク接続やデータ集約、経営資源の最適配分など、これまで以上に高度な機能が求められている。中国情報通信研究院が主催した「2026産業インターネット大会」では、多くの専門家がAIと産業インターネットの融合による新たな可能性について議論した。
中国工程院院士の銭鋒氏は、産業インターネットを基盤に「産業の頭脳(インダストリアル・ブレイン)」を構築し、製品の設計から生産、保守まで製品ライフサイクル全体を一体的に管理するスマート製造システムの実現が重要だと指摘した。これにより、サプライチェーンやバリューチェーンの最適化、生産資源の効率的な配分、生産工程のリアルタイム制御、安全・環境管理、新製品・新素材の設計などを高度化し、「新たな質の生産力」の形成を促すとともに、製造業のデジタル化・スマート化と質の高い発展を後押しできるとしている。AIと産業インターネットの融合は、データを軸に産業全体が連携する新たな産業モデルを生み出しつつある。
また、中国情報通信研究院・産業インターネット・IoT研究所の副所長、謝家貴氏は、「産業インターネットは、単に設備や工場をつなぐネットワークではなく、産業全体の知識やノウハウを蓄積・活用するデジタル基盤へと進化している」と説明する。その中核を担うのが産業向けAI大規模モデルであり、多品種少量生産、設備保全、品質管理、サプライチェーン最適化など、新たな製造モデルの実現を支える重要な技術になると指摘した。
こうした流れを受け、中国工業情報化部など8部門はこのほど、「産業インターネットの質の高い発展を促進する実施意見」を公表した。同意見では、「AIと産業インターネットの融合」を重点施策に掲げ、産業データの整備や、端末・エッジ・クラウドを組み合わせた計算資源の効率的な活用、AIモデルの学習環境整備、産業向けAIエージェントの普及を進める方針を示した。
さらに、AIの「認識、学習、自立実行」能力を生かし、産業インフラの高度化や製造現場の判断・制御能力を向上させることで、AIを活用した製品設計や生産ネットワークの最適化などを通じて、新たな製造モデルの実用化を加速させる方針だ。
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