
韓国では高齢化と少子化が急速に進み、2026年には65歳以上が総人口の21.6%に達した。合計特殊出生率も2025年に0.80と低迷している。中国でも同出生率が2023年に1.0を下回り、2024年の65歳以上人口は2億2,000万人を超えた。両国では、生産年齢人口の減少に伴う労働力不足への対応が課題となっている。
こうした中、日本は世界に先駆けて少子高齢化に直面し、高齢者の就労促進やシニア人材の活用に取り組んできた。その先駆的な企業の一つとして注目されるのが、株式会社高齢社である。「働くから元気になる」と語る村関不三夫社長に、創業の背景やシニア人材ならではの強み、高齢者雇用をめぐる企業側の意識の変化、少子高齢化が進む中国や韓国などに伝えたいことを聞いた。
シニアの経験を生かす場をつくる
―― 御社は、なぜ高齢者に仕事を紹介する会社をつくろうと考えたのでしょうか。創業のきっかけを教えてください。
村関 この会社をつくったのは、東京ガス出身の上田研二です。2000年に設立され、今年で26年になります。私は5代目の社長です。
そもそも、企業側に「こういう人たちに働いてもらいたい」というニーズがあったんですね。上田は東京ガスの子会社の社長をしていて、マンションの入居予定者に床暖房などのガス器具の使い方を説明する仕事を、東京ガスから受けていました。
ところが、入居前の説明会は土曜や日曜に開かれることが多い。社員に休日出勤をしてもらうと、振替休日を取ってもらったり、時間外勤務が発生したりして、なかなか仕事が回らなくなったんです。
そこで思いついたのが、65歳を過ぎて家にいる東京ガスのOBでした。まだ働く力も経験もある。その人たちに声をかけて、説明の仕事を手伝ってもらおうと考えた。それが始まりです。
上田は1990年代に、当時の橋本龍太郎通産大臣の講演を聞いたそうです。少子高齢化で労働力が不足する日本では、女性、高齢者、外国人、ロボットの力が必要になるというお話でした。その中で、高齢者の働く場をつくることには、自分も取り組もうと考えたんですね。

シニアならではの強み
―― 御社は「は・げ・あ・た・ま」をモットーに、「働く人ファースト」を掲げています。村関社長が考える、シニアならではの強みとは何でしょうか。
村関 まず、人生経験も社会人としての経験も豊富ですから、安心して仕事を任せられるということですね。時間を守る、約束した仕事にきちんと行く。そうした基本が身についている方が多いんです。
もう一つ、面白い強みは朝早い仕事が得意なことです。例えば、レンタカーの営業所は朝早くから開きます。毎朝、正社員だけで対応するのは大変ですが、シニアには早起きが苦にならない人が多い。
私も70歳ですが、毎朝4時半に起きて、6時前には家を出ます。7時ごろ会社に着くと、もう5、6人が働いているんですよ。若い人とは少し違うところで強みを発揮できる。それがシニアの良さだと思います。
―― 「は・げ・あ・た・ま」は、どのように生まれた言葉ですか。
村関 私が考えました(笑)。東京ガスの現役時代から、「明るく、楽しく、前向きに行こう」と言っていたんです。その頭文字が「あ・た・ま」でした。
この会社に来て分かったのが、「人は元気だから働くのではなく、働くから元気になる」ということでした。70歳を過ぎても働いている人を見ると、「元気だから働けるんだろう」と思われますが、働くことが元気につながっているんですね。うちの営業スタッフにも、76歳で毎日2万歩歩く人がいます。
そこで、「働いて、元気になろう」の「は・げ」を付けて、「は・げ・あ・た・ま」(働いて建機になろう。明るく楽しく前向きに行こう)を高齢社のモットーにしました。私の写真を見ると、その通りですからね(笑)。
当社の事業目的は、儲けの追求ではありません。働く皆さんに無理のない仕事を紹介して、幸せな老後を実現していただく。そういう仲間を増やすことなんです。
―― 「無理のない仕事」とは、どのような働き方でしょうか。
村関 家から近い、午前だけ、午後だけ、週2、3日という働き方ですね。一つの仕事を二人で分けることもあります。負荷が少なく、危険な作業がないことも大切です。土日に働いて、平日に休むという働き方もあります。
例えば、ゴルフ場のコース管理の補助では、バンカーの砂をならしたり、雑草を取ったりします。朝早い仕事ですが、ゴルフが好きな人には合っていますし、定休日にゴルフをさせてもらえることもあるんです。
マンションの清掃やレンタカーの受け渡しも、仕事が多い分野です。清掃と聞くだけで敬遠する方もいますが、実際に働いている方には、満足して続けている人が多い。家の近くで、朝早くから体を動かせる。そういう仕事がシニアに合うこともあるんですね。

実績と支援で変わる企業の見方
―― シニアの採用に、年齢による先入観を持つ企業もあります。御社は、シニアの働く力をどのように伝え、企業の見方を変えてきたのでしょうか。
村関 最初から、シニアがどんな仕事でもできると分かっていたわけではありません。実際に派遣先でどう働いているか、その実績を積み重ねながら、「シニアにも、まだこんなことができますよ」と理解していただいてきたんです。
昔の70歳というと、杖をついているようなイメージがあったかもしれません。でも、今は昔に比べて10歳ぐらい若返っているんじゃないかと感じますね。
例えば、外回りの営業をしている方の中には、80代でもトップセールスマンとして活躍している方がいます。以前、香港のテレビ局に取材してもらった日は雨でしたが、傘を差してたくさんの家を訪問していました。こうした働きぶりを見ていただくのが、一番分かりやすいと思います。
―― 長い間、仕事から離れていた方も働いているのですか。
村関 はい。もともと東京ガスで働いていて、20代で結婚して専業主婦になった女性がいます。子育てが一段落して、60代で「もう一度働いてみようかしら」と仕事に戻った方です。
今はコンビニで週4日、朝7時15分から働き、月に約15万円を得ています。趣味が社交ダンスで、衣装代を買うのも働く目的なんですね。
長く仕事をしていないと、「本当に私にできるのかしら」と不安になる方は多いです。そういう方には、まず小さな仕事からやってみてくださいと声をかけます。始めてみると、その後はすんなり続く方が多い。この方も、もう10年ほど働いています。
―― 働き続けられるように、どのような支援をしていますか。
村関 当社の営業スタッフは全員シニアです。これが会社としての強みですね。派遣社員と同じ世代なので、その方の気持ちや事情に寄り添いやすいんです。
ただ仕事を紹介して、「あとは自分で探してください」ではなく、一緒に考えていく。その人に合う仕事や働き方を見つけることが大事だと思います。
全国から応募をいただくこともありますが、私は会社を大きくすること自体を目指していません。幸せに老後を過ごせる働く仲間は増やしたい。でも、支える人がいなければ、拠点を開くだけではうまくいかないんです。
愛知県には、上田がノウハウを伝えて支援した「シニア東海」という会社があります。同じような取り組みが各地に広がることは良いと思いますが、やはり、働く人に寄り添える人がいることがポイントですね。

日本経済への貢献と海外との課題共有
―― 人生100年時代に、シニアの活躍は日本経済にどのような力をもたらすでしょうか。また、高齢化が進む中国など、他の国に御社の取り組みから伝えられることは何でしょうか。
村関 いろいろな業界で人手不足が言われています。「この仕事は誰がやるのか」というところで、高齢者が働ける意味は大きいと思います。朝早い仕事など、それぞれの得意なところを生かせば、必ずしも若い人の仕事とぶつかるわけではありません。シニアの力は、日本経済になくてはならないと思いますね。
また、働いて元気になれば、医療費を抑えることにつながる面もあるでしょう。年金の受け取りを繰り下げるようなことがあれば、年金財政にも良い影響があるのではないかと思います。
昨年12月には韓国に行き、日本の取り組みについてお話ししました。日本が失敗したことをそのまま学ぶ必要はないけれど、良い取り組みがあれば参考にしたい、ということでした。中国とも、こうした情報交換を民間の立場でも進められると良いですね。
私たちの事例からお伝えできるのは、高齢者が働きやすい働き方を見つけることです。経験などの強みがある一方で、健康面には気を配らなければいけません。転倒や夏の熱中症、運転業務での事故などに注意しながら、無理なく働けるようにする。日本でやっていることが参考になるのであれば、ぜひ生かしていただきたいと思います。
―― 働くシニア自身には、どのような心構えが必要でしょうか。
村関 当社では月に1回、これから登録して働こうとする方に、入社時の基礎研修とビジネスマナー研修を行っています。健康や安全についてもお話ししますが、心構えとして大切なのは「感謝と謙虚」です。
65歳を過ぎても仕事があることに、まず感謝していただきたい。「俺は昔、部長だったんだ」と偉そうにしてしまうと、職場でうまくいきません。そこで、「昔の自慢話は1回まで」とお話ししています。
派遣という形で、以前と同じ職場に戻る方もいます。その場合、指示をする人が元部下や後輩ということもあるんです。でも、今はその人の指示に従って仕事をする立場ですから、昔の関係を引きずってはいけない。
ですから、「一度リセットしてください。新入社員になったつもりで働いてください」とお願いしています。これまでの経験は生かしながら、気持ちは新しくする。そのことが、周りの人と良い関係をつくり、楽しく働き続けるために大切だと思います。

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