IMF(国際通貨基金)の2026年4月版「世界経済見通し」によると、中国経済の規模は日本の約5倍に達する。加えて中国市場は急速に高付加価値化し、日本企業の技術力が生きる分野が拡大している。
中国市場は多くの産業分野で、米国・欧州での競争に匹敵する技術レベルが求められる市場となり、その消費市場規模は欧米を凌駕する。「中国で勝てない企業は世界で勝てない」(日本シンクタンク幹部)と言われる所以だ。
中国市場で持続的に成長するためには、製品、技術、サービスのあらゆる分野で、シリコンバレーの米国企業や深圳のハイテク中国企業などと対等以上に渡り合える競争力が求められる。特に中国企業との競争に対峙するには、現地市場を熟知している若手に意思決定権を与え、迅速に製品開発や顧客開拓を進められる組織作りが必須だ。
中国企業はEV(電気自動車)、ロボット、太陽光・風力発電、ドローンなどで世界トップレベルの技術水準に達している。信頼度の高い日本のサプライチェーンを求める中国企業も増えている。
中国進出の日本企業、
日中関係改善を求める
中国に進出する日本企業で構成する中国日本商会は2026年7月末、会員企業を対象としたアンケート結果を発表。軍民両用品の輸出規制や一般貨物の税関審査の長期化などに対する改善を中国当局に求める声が多く寄せられた。
同商会の本間哲朗会長(パナソニックホールディングス顧問)は「日中政府間の関係悪化が長引けば、多くの日本企業にとってマイナスの影響が出る」と懸念した。業種間で明暗が分かれており、半導体やディスプレー、造船、一般機械などは好調だった一方、自動車は売上高が低下したという。
世界最大の中国自動車市場、覇権を左右
英調査会社によると、25年のEV販売は中国で857万台と世界の6割を占め、欧州の約3倍、日本の100倍超。30年には1141万台を見込んでいる。EV市場は目下、日米欧で逆風が吹くが、中長期では世界規模で拡大する。世界最大のマーケット、中国は世界の自動車市場の覇権を左右する重要地域になっている。
こうした中、日本企業をはじめ世界の自動車各社は、世界最大の中国マーケットをターゲットにした車開発を積極化。トヨタ自動車が2027年秋、高級車ブランド「レクサス」の多目的スポーツ車(SUV)次世代車として販売する。新型車は27年に中国・上海市の新工場で組み立て、初年度は月1000台程度製造。28年以降、年間数万台を生産する。
車体には最先端の部品をとり入れ、軽量化で1回の充電での走行距離が延びる。工程が減るため生産スピードも高まる。他の車種も含め華為技術(ファーウェイ)など中国企業の先進技術を導入する。
日産自動車は新車の開発期間を約2年と、従来から半分に縮める方針を掲げる。独フォルクスワーゲン(VW)も中国のEVメーカーと組み、30年までに最大で50車種の新エネルギー車を発売する計画だ。
従来の自動車メーカーは通常4~5年で新型車を開発するのに対し、中国の新興EVメーカーは半分の2年という短期間で新車を生み出す。中国企業の先端技術を取り込みながら、開発スピードを高めるといった中国ならではの戦略が求められている。
超党派議員団が訪中、
関係改善へ動き出す
自民党の橋本岳氏や中道改革連合の伊佐進一氏らによる超党派議員団が8月24~27日の日程で中国・北京を訪問。公明党の川村雄大氏、立憲民主党の小西洋之氏、無所属の緒方林太郎氏も同行した。議員団は8月27日、中国共産党で党外交を担う中央対外連絡部の陸慷副部長と北京で会談。陸氏は「日本が台湾を巡る認識を改めない限り、中国政府は対日政策を変えるつもりはない」と伝え、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁の撤回を求めたという。
日本側は中国当局が拘束した邦人の早期解放や、レアアースなどの輸出規制の撤廃を要求。中国政府が高市政権の防衛政策を「新型軍国主義」と批判していることについて、「日本が軍事力を使って政治や経済の目標を達成することはあり得ない」と反論した。
日中友好議連は9月13日から中国に議員団 (団長=高村正大自民党衆院議員)を派遣。与野党の8人で構成し、中国人民対外友好協会の楊万明会長や中国外務省の劉彬次官補と会談した。議員団は 中国による在留邦人の拘束に懸念を示しつつ、人的交流の重要性を提起。 中国側もこれに呼応したという。
伊佐氏は今回の訪中が日中関係の正常化に向けた雰囲気づくりになったと評価。中国側もこの認識を共有、会談時間は当初予定の1時間から2時間に延びた。
議員団は中国滞在中、中国社会科学院の研究者らと意見交換したほか、習国家主席肝入りの新都市「雄安新区」(河北省)や自動運転のモデル区を視察した。
冷え込んでいる日中関係だが、官民の尽力で少しずつ緩和に向け動き出したと見ていいだろう。

<評者プロフィール>
1971年時事通信社入社。ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。Record China社長・主筆を経て現在同社相談役・主筆、『日中経営者』顧問。日中経済文化促進会会長。東京都日中友好協会特任顧問。著著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」など。
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