中国で民間投資の活力高まる

民間投資は、経済成長や雇用を支える重要な柱である。中国では、既存政策と追加政策の効果により、民間投資は製造業や新興産業を中心に拡大し、投資意欲も高まっている。

重点分野への参入広がる

先ごろ、中国で初めて民間資本が参画する原子力発電プロジェクト「中広核・浙江三澳原子力発電所」の1号機が営業運転を開始した。建設には設備製造や保守サービス、建設工事などの分野で約2000社の民間企業が参加し、大型プロジェクトへの参画を通じて受注機会を拡大している。

今年に入り、中国政府は中央・地方が一体となって民間投資を後押しし、市場参入規制の緩和や参入障壁の撤廃を進めてきた。その結果、これまで参入が難しかった原子力、鉄道、電力といった分野にも民間資本の参入が広がり始めている。

民間企業も、新たな成長分野への投資を積極化させている。安徽省滁州市の合滁協力産業園では、滁州乾モリブデン智能製造有限公司の「サイバーファクトリー」が建設中で、今年8月末の完成を予定している。稼働後は、高性能防護装備の生産能力拡大と高付加価値化を促進する見通しだ。

同プロジェクトの柳艷炉副総経理は、「成長が期待できる分野への投資と地域産業の高度化が一致していることが、投資への自信につながっている」と説明する。同社は継続的な設備投資によって技術革新と製品の高度化を進め、市場環境の変化に対応する競争力を高めている。

民間企業は、「新たな質の生産力」を育成する重要な担い手でもある。現在、中国では民間投資の重点が先端産業へと移りつつあり、低空経済(ドローンなどの低高度空域ビジネス)、バイオ製造、量子技術、エンボディドAI(具身知能)といった新分野の成長が、投資機会を大きく広げている。

こうした中、重慶市の東贏恒康企業(集団)有限公司は、大規模AIモデルやビッグデータを活用したデジタル交通システムの開発を進めている。AIを活用して都市部の慢性的な駐車場不足の解消を目指す取り組みだ。

張林東董事長は「都市部では依然として駐車スペースが不足しており、関連市場には大きな成長余地がある。今年もデジタル交通分野への投資を続け、地方政府との連携を深めながら都市運営の高度化に貢献したい」と話す。

AI投資と政策支援が加速

また、デジタル経済の発展を支える計算力(コンピューティング能力)への投資も加速している。民間企業はAIやデータセンターなどの基盤整備を成長分野と位置付け、積極的な投資を進めている。

AI分野への投資も加速している。美団はAIモデルの研究開発を強化するとともに、国内の半導体メーカーと連携してAIモデルと半導体の共同開発を推進。総パラメータ数1兆6000億の次世代基盤モデルを発表した。一方、科大訊飛は両儀万象(北京)科技有限公司に戦略出資し、新会社「量智開物(北京)科技有限公司」を共同設立。量子コンピューティング分野への本格展開を進めている。

イノベーション分野では、民間企業の存在感も一段と高まっている。中国ではこれまでに60万5000社の科学技術型・イノベーション型中小企業と49万社を超えるハイテク企業が育成され、その大半を民間企業が占める。国家ハイテク企業に占める民間企業の割合も92%を超えている。

政府が民間投資を後押し

こうした動きを後押ししているのが政府の支援策だ。市場参入制度の改革や中小・零細企業向け利子補給、技術革新や設備更新向け融資の拡充など、一連の政策が民間投資を支えている。民間企業が安心して投資し、成長につなげられる制度づくりも進んでいる。

「第15次五カ年計画」では、民間投資の活性化を重要課題に位置付け、民間企業が国家の重点プロジェクトへ継続的に参画できる仕組みを整備するとともに、科学技術イノベーションや産業高度化への投資拡大を促す方針を打ち出している。

地方政府も民間投資の拡大に力を入れている。浙江省ではインフラ分野への民間企業の参入を拡大し、重慶市では民間資本向けの投資案件を継続的に公開。広東省でも民間投資を支援・評価する仕組みを整備するなど、各地で市場参入の拡大や投資環境の改善が進められている。

先日開かれた全国民営経済発展推進会議では、国家発展改革委員会や財政部が、民間投資の促進やサービス業の高度化、財政・金融政策による内需拡大策を説明するとともに、民間資本向けに290件を超える優良プロジェクトを紹介した。

国家発展改革委員会民営経済発展局の責任者は、「『第15次五カ年計画』期間中には、6つの新興基幹産業の生産額は10兆元(約240兆円)を超え、サービス業にも20兆元(約480兆円)規模の成長余地がある。インフラ整備などの重点プロジェクト(「六つのネットワーク」)が進む中、民間企業には、この成長機会を捉え、重点分野への投資を積極的に進めてほしい」と述べた。