日本航空が 「女性の健康」を経営戦略に

日本の航空業界では、強い体力と精神的なタフさが求められる。客室乗務員の笑顔の裏には、時差による体調の乱れ、長時間の立ち仕事、常に緊張を伴う業務など、少なからぬ身体的負担がある。こうした中、日本航空(JAL)の鳥取三津子社長は先ごろメディアの取材に応じ、「女性特有の健康課題への対応は、単なる福利厚生にとどまらず、企業の持続的な成長に関わる重要な経営戦略である」との認識を示した。

 

 

女性の健康を人的資本に

日本航空は現在、大学病院と連携し、人工知能(AI)を活用した健康支援の仕組みを検討している。具体的には、社員の骨密度測定や食生活の改善提案などを行い、日本の若い女性に多く見られる過度なダイエットや、それに伴う見えにくい健康リスクへの対策を進める考えだ。

鳥取社長は、若い女性に多く見られる過度なダイエット志向が、将来的に不妊や骨粗鬆症などの健康問題を引き起こす可能性があると指摘し、「社員の目先の体調だけでなく、10年、20年先を見据えた『生涯健康』を目指す」と説明した。

これはまさに、いわゆるヒューマン・キャピタル(人的資本)の考え方である。企業が社員の20年後の骨密度まで視野に入れるということは、長期的な人材確保への投資にほかならない。高齢化と労働力不足が進む社会において、女性社員が人生のさまざまな段階で能力を発揮し続けられる環境を整えることは、企業にとって最も現実的で堅実なリスクマネジメントと言えるだろう。

これまで育児は、しばしば「家庭の私的な問題」と捉えられてきた。しかし、鳥取三津子社長は、睡眠不足が社員の心身の健康を損なうだけでなく、生産性の低下にも直結すると考えている。専門家から子どもの寝かしつけの方法などについて助言を受け、社員の負担軽減につなげる取り組みを進めている。これは、航空会社にとって最も重要な価値である「安全」を守ることにも通じる。十分な休息を取った社員によってこそ、安全とサービスの質は支えられるのである。

 

 

持続可能な職場文化へ

日本航空初の女性社長である鳥取三津子氏は、自ら客室乗務員として勤務した経験を持ち、時差や長距離移動が女性の身体に与える負担を身をもって理解している。女性の健康は、単に「配慮されるべき弱点」ではなく、企業として戦略的に管理すべき重要な資源なのである。

これまで日本や中国の職場では、「性差別はない」という建前のもと、女性も生理周期などの身体的変化にかかわらず、男性と同じ水準の成果を求められることが少なくなかった。

しかし、多様性と包摂性が重視される現代において、日本航空は航空路線を運営する企業としての責任を果たしながら、より持続可能な職場文化の構築を目指している。