編集者注: CS SDOメソドロジーは、曹申氏が独自に開発した経営手法である。アクセンチュアやIBMなど世界的なコンサルティング企業でシニアマネージャーを務めた経験をもとに、日系企業の業務環境に合わせて体系化したもので、海外市場の開拓を目指す経営者に実践的な指針を提供する。
張氏は、ある大手日系エンジニアリング企業で20年以上の経験を持つ、技術畑出身の管理職である。納品品質には一切妥協せず、顧客の要求にも徹底して応える。その姿勢が評価され、サービスエンジニアリング部の部長に昇進した。
しかし社内では、サービス部門は長らく、利益を生む部門ではなく、コストが発生する「コストセンター」とみなされてきた。張氏自身も、受注案件に責任を持ち、品質を最優先することこそサービス部門の使命だと考えていた。
ところが、サービス部門のコスト増加が会社全体の営業利益を圧迫するようになり、同部門は重点的な見直しの対象となった。張氏も会社の方針に従ってコスト削減に取り組んだが、結果は思わしくなかった。チームの士気は低下し、技術者からも不満が相次いだ。
会社がCS SDOメソドロジーを導入した当初、張氏はその効果に懐疑的だった。しかし、理解を深めるにつれ、CS SDOの目的が単なるコスト削減ではないことに気づいた。
その考え方は、専門的なサービスを顧客に早い段階から提供し、それを市場開拓につなげることで、サービス部門を「コストセンター」から利益を生み出す「プロフィットセンター」へ転換するというものだ。
重要なのは、サービスの「量」を増やすことではなく、「的確さ」を高めることである。顧客によって収益性やニーズは異なる。それぞれの顧客を見極め、必要とされる専門サービスを的確に提供することが、CS SDOの基本的な考え方である。
さらに重要なのは、CS SDOが単独で機能する手法ではなく、CSメソドロジー全体の一部だという点である。IPD、DMI、SFEなどを学ぶことで、張氏はその全体像を理解していった。DMIで顧客を分類し、SFEで営業体制を最適化し、SDOで顧客に応じたサービスを設計する。この3つを連動させることで、初めてコスト削減と業務効率の向上が可能になる。
これまでの失敗を教訓に、張氏は一気に導入するのではなく、段階的に進める方針に切り替え、3段階の実施計画を策定した。各段階で対象となる顧客、サービス内容、収益モデル、リソース配分を明確にした。
張氏らは、顧客が意思決定を行う前からプロジェクトに関わるようになった。初期には課題を把握する「診断型サービス」、中期には効果を確かめる「検証型サービス」、後期には本格的な導入・納品サービスを提供する。営業部門は初期段階で顧客の将来性を見極め、エンジニアリング部門は必要なサービス内容を設計し、財務部門が最終的な収益性を検証する仕組みとした。
第1段階の試行では、CS SDOの効果が早くも表れた。顧客を分類することで、将来性の高い顧客には手厚いサービスを提供する一方、低い顧客には投入するリソースを抑えた。また、専門的なサービスを早い段階から提供することで、顧客の商品やサービスに対する理解も深まった。その結果、張氏らのサービスは付加価値を生み、より高い価格を設定できるサービスへと変わっていった。
財務部の試算では、サービスコストの比率が低下する一方、顧客1社当たりの粗利益率と長期利用率は向上した。営業部門にも変化が表れ、サービスプランの設計に積極的に参加するようになった。早い段階から提供するサービスが単なるコストではなく、契約の成功率を高める有効な手段だと認識したためだ。
こうしてエンジニアリング、営業、財務の連携が進み、サービス部門はコストを抑えるだけの存在から、利益を生み出す部門へと変わり始めた。張氏もまた、コストと品質の板挟みになっていた状況から抜け出すことができた。
振り返れば、張氏は当初、コスト削減そのものを目的としていたことが本末転倒だったと気づいた。サービス部門をバックエンドのサポート部門と位置づけること自体が間違いだったわけではない。しかし、競争が激化するなか、重要なのは単純なコスト削減ではなく、サービスの仕組みを見直し、企業としてのソリューション能力を高めることだった。
CS SDOは単なるツールではなく、IVSソリューションシステムを構成する重要な要素である。サービス部門を「コストセンター」と位置づければ、管理の重点はコスト削減に置かれる。一方、「プロフィットセンター」と位置づければ、サービスを通じた価値創造が重視されるようになる。
サービスによって顧客との信頼を築き、そのニーズへの理解を深め、長期的な関係につなげる。こうした好循環を生み出すことが、サービス部門を利益を生み出す組織へ変える鍵となる。
昨年末、張氏は初めて社内の優秀プロジェクト賞を受賞した。CS SDOの導入を経験した張氏は、その教訓をこう語る。「SDOは早い段階から導入してこそ、ビジネス上の価値を生みます。個別のプロジェクトとして扱うのではなく、全体の仕組みの中で運用することが重要です。そして、『試行→モデル構築→展開』という手順を守り、一気に導入してはいけません」。
長年サービス部門に携わってきた張氏がたどり着いた、一つの結論である。
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