新エネルギー車、リチウム電池、太陽光発電製品からなる「新三様(新三品目)」に続き、AI、ロボット、革新的医薬品などの新製品が急速に海外市場を開拓し、中国輸出の新たな主力商品となっている。
統計によると、2026年上半期、中国の産業用ロボットの輸出は前年同期比18.6%増加し、世界141の国・地域に販売された。手術支援ロボットの輸出先も、前年同期の23か国から49か国へと倍増した。また、革新的医薬品の海外ライセンス契約額は約1100億ドル(約17兆6000億円)に達した。これは2025年通年の約8割に相当し、過去最高を更新した。これらの新製品には、どのような強みがあるのか。なぜ中国の対外貿易を支える新たな成長の柱となったのか。記者がその背景を取材した。
重さわずか49グラムのAIメガネが、中国語、フランス語、英語など89言語のリアルタイム双方向翻訳に対応する。メガネをかけるだけで、翻訳文を目の前の画面で確認できる。
先ごろ、フランス・パリのヴェルサイユ門展示センターで、霊伴科技(杭州)が出展した「Rokid」のAIメガネが、多くの来場者の注目を集めた。フランスのマクロン大統領も実際に体験して高く評価し、その場で同社スタッフに名刺を求めた。
このAIメガネが注目を集めた理由は、先進的な機能と高い実用性にある。霊伴科技(杭州)有限公司の副社長兼国際事業責任者、邵華強氏は本紙の取材に対し、同社が輸出する「Rokid Glasses」について、撮影、リアルタイム翻訳、ナビゲーション、AIによる物体認識、質問応答など、多彩な機能を一体化していると説明した。同社によると、量産されているフル機能AIメガネとしては世界最軽量だという。
「当社は、外部のAIモデルやサービスと連携できる『オープンエコシステム戦略』を進めている。海外のユーザーは、主要な大規模AIモデルを自由に選んで接続し、音声や画像、文字を組み合わせてやり取りできるため、地域ごとに異なるニーズにも対応できる。今年に入り、海外からの受注は堅調に伸び、海外事業の比率も上昇を続けている」と邵氏は語った。
中国の売れ筋輸出商品の変遷は、産業高度化の着実な進展を映し出している。
かつては、衣料品、家具、家電からなる「旧三品目」が、価格競争力を武器に国際市場を開拓した。近年は、新エネルギー車、リチウム電池、太陽光発電製品からなる「新三品目」が、中国の環境・エネルギー関連製品の競争力を示してきた。
現在、ベルギーの外科医は、上海微創医療ロボット(集団)が開発した内視鏡手術ロボットを使い、前立腺がんの遠隔手術を行っている。スイスの原子力発電所では、中国製の四足歩行ロボットが危険区域を自律巡回し、設備を点検している。米国の映画監督チャールズ・カラン氏は、バイトダンスの動画生成AI「Seedance 2.0」を使って映画の予告編を制作した。こうした中国の新製品が海外で人気を集め、中国製品に対する認識を変えつつある。
ケニアのネットユーザー、Kimuzi氏は「中国製のHioロボットが100メートルを9.32秒で走り、ウサイン・ボルトの世界記録を上回った。スタートは遅かったが、その後、驚異的な加速を見せた。中国の技術は際立っている」と投稿した。
米国のネットユーザー、クリミー氏は「革新的医薬品の分野では、中国が米国を大きくリードしている。特に、新たな治療法や治療標的、適応症を取り入れた独創性の高い臨床試験に、中国の優位性が表れている」と述べた。
中国税関総署の王軍副署長によると、知能型生体模倣ロボットと清掃ロボットには今年、専用の税関コードが新設され、国際貿易における独自の「身分証明書」が与えられた。これにより、貿易統計の精度が高まり、業界の動向をより正確に把握できるようになった。
王氏は、税関は今後も監督・管理サービスを改善し、貿易の円滑化を進めることで、中国の対外貿易の高度化と世界のスマート経済の発展に貢献していくと述べた。
中国の新製品が海外で売れ行きを伸ばし、急速に市場を拡大しているのは、現地の生産・生活ニーズに的確に応えているためだ。
天津望円智能科技株式会社の生産拠点では、海外で「プール清掃のプロ」と呼ばれるスマートプール清掃ロボット「S3」が量産されている。同社が世界で初めて開発したS3は、家庭用プールの清掃・維持管理に人手と費用がかかるという課題に着目し、全工程の無人化を実現した。
同社の朱蕭常務副総経理は、海外ユーザーの利用環境に合わせて製品を改良してきた経緯を説明した。
2009年当時、欧米メーカーのプール清掃機器は大型で価格も高く、一般家庭が求める軽量製品の需要に応えられていなかった。そこで同社は、技術開発によって軽量化を実現し、海外市場を開拓した。
2014年頃には、有線ロボットのケーブルが清掃中に絡まるという問題を解決するため、世界初のワイヤレスプール清掃ロボットを開発した。これにより利便性が向上し、業界のワイヤレス化も進んだ。
「現在、自社開発した水中AI画像認識、水中通信、水中測位、水中3Dモデリング、自動帰還・充電、自動ごみ回収などの先端技術をS3に搭載している。周囲の状況を自ら認識し、判断、経路計画、清掃、電力管理まで行うことで、利用者をプール清掃の重労働から解放した」と朱氏は語った。
用途が広がるほど、市場も大きくなる。上海税関によると、今年上半期、上海市の輸出額は初めて1兆元(約24兆円)を突破した。AIやロボットなどの新分野に加え、船舶や自動車といった従来型産業も伸び、輸出の好調を支えた。
上海擎朗智能科技の最高執行責任者(COO)、万彬氏は「当社は16年以上にわたりサービスロボットに注力し、ホテル・外食、医療・介護、製造・小売など幅広い分野で事業を展開している。製品は世界70以上の国・地域に輸出され、レストラン、ホテル、病院、図書館、空港、オフィスビルなどで稼働している。今年に入り、輸出台数、輸出額ともに前年同期比で大幅に増加した」と述べた。
万氏は製品の強みとして、「現場で培った信頼性」「現地に根差したサービス力」「幅広い用途に対応する汎用機と、特定業務に特化した専用機をそろえた製品ラインアップ」の三つを挙げた。「当社の製品は研究室の試作品ではなく、世界各地のレストラン、ホテル、スーパーマーケットで毎日実際に働いているロボットだ」。同社は豊富な運用実績を生かし、海外顧客の多様なニーズに対応している。例えば、店舗の通路が狭い日本向けには、幅49センチの通路でも走行できる小型機種を開発した。
技術革新は、AIやロボットなどの新たな輸出製品に共通する特徴であり、その国際競争力の源泉でもある。
江蘇恒瑞医薬が公表した報告書によると、2026年上半期の革新的医薬品の売上高は88億900万元(約2114億円)で、前年同期比16.38%増加し、医薬品売上高の63.16%を占めた。6月末時点で、同社は米国、欧州、オーストラリア、日本などで、第Ⅰ相から第Ⅲ相までの臨床試験を多数実施している。製品は50か国以上で販売されている。
今年上半期に中国当局が承認した、新たな治療標的や薬が作用する仕組みを採用した革新的医薬品11品目は、すべて中国の製薬企業が開発したものだった。
過去5年間、中国全体の研究開発費は年平均10%増加し、世界第2位を維持している。継続的な研究開発投資は、「中国製造」から、AIやデジタル技術を活用した「スマート製造」への転換を後押ししている。こうした動きは、ロボットやAIの分野で特に顕著だ。
長沙長泰ロボット有限公司は、先端設備の研究開発・製造を手がけている。主な輸出製品は、変圧器用コイル巻線ロボット、布地の巻き取り・検査機、清掃・研磨ロボットの3種類で、いずれもエンボディドAIを搭載している。同社の高狄CEOは、現在、東南アジアと欧米市場の開拓に力を入れていると説明した。
「当社は湖南大学、中南大学と共同で研究所を設立し、エンボディドAIの認識技術や、力と位置を同時に調整する制御技術の開発に取り組んでいる。海外向け製品については、各国・地域の規格に関する認証取得を急ぐとともに、中東、欧州、東南アジアの基準に合わせて全製品シリーズを改良している。また、導入済みの設備から得たデータをアルゴリズムの改善に生かし、さまざまな環境への対応力を高めている」と高狄氏は語った。
広東華沿ロボットの海外展開を支えているのも、継続的な技術革新だ。同社の最高開発責任者兼取締役会会長補佐、林深氏は「独自開発した高性能モーターは、磁気回路の設計を改良することで、同じ大きさでもトルクを30%以上高めた。また、二重関節モジュールは中国の発明特許を取得しており、繰り返し位置決め精度は±0.015ミリメートルと、髪の毛の直径の約6分の1に相当する」と説明した。
同社のロボットは、精密部品の組み立て、溶接、荷物の積み上げ、研磨など、60種類以上の作業に対応する。コンピューター、通信機器、家電を指す「3C」をはじめ、自動車、半導体、医療など40以上の業界で使われ、世界50以上の国・地域に輸出されている。同社は、外部システムと連携しやすい製品基盤と現地サービス体制を通じて、効率性と信頼性の高いロボット活用策を提供している。
中国各地の税関も、新たな主力輸出商品の成長を支えている。杭州税関は、海外市場の参入基準や環境認証制度に対応するため、企業支援プラットフォーム「紅船企航」を通じ、ロボットメーカーに必要な情報を提供している。
また、ロボットの輸出が小ロット・多頻度で行われることを踏まえ、企業の出荷計画に合わせて検査を実施し、検査後の貨物を速やかに通関させている。これにより、企業の保管・輸送コストを削減している。
広州税関管轄の仏山税関は、企業支援策の改善を続けている。「税関長による企業訪問」や、課題を解決まで追跡する「問題ゼロ化」の仕組みを通じ、管内のロボットメーカーを訪問して要望を聞き取っている。また、内部管理、財務状況、法令順守、貿易上の安全管理などを確認し、企業ごとに改善策を提案している。
天津税関管轄の塘沽税関は、企業が自由貿易協定(FTA)の原産地規則に基づく関税優遇を活用できるよう支援し、輸出コストの削減を図っている。また、先端スマート製品の輸出手続きを優先し、企業や製品に応じた検査を行うことで、港での貨物の滞留時間を短縮している。これにより、海外からの注文に納期どおり対応し、各分野における中国製品の世界シェア拡大を支えている。
業界関係者は、企業の技術革新が進むなか、「新三品目」に続く新たな輸出商品が相次いで登場し、中国貿易の質の高い発展を支える原動力になるとみている。
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