中国の茶愛好家は茶を語る際、必ず「年数」に言及する。熟成プーアル、熟成白茶、熟成六堡、熟成ウーロンといった具合に、十年、二十年ものなどと語られる。古いものほど良いとされ、熟成期間が長いほど香りが増し、当然値段も高くなる。中国人にとって、熟成期間は欠くことのできない要素なのである。
それに対し、日本人はまったく逆の姿勢をとる。煎茶、玉露から抹茶に至るまで、「新しさ」が重視される。パッケージには収穫時期や製造時期が必ず明記され、ひとたび時期が過ぎれば価値も失われるようである。
この違いが示しているのは、中国人と日本人のどちらが茶を理解しているかという問題ではない。両者は、時間に対してまったく異なる二つの製茶論理をとってきたのである。
古いものを貴ぶことと新しいものを追求することは、方向性の異なる二つの価値観である。中国と日本では、茶の評価基準は、時間の積み重ねの中で、まったく異なる道を歩んできたと言える。
安徽農業大学所蔵の1970年代製緑茶
三年熟成番茶
多くの中国茶の場合、酸化酵素の活性が熟成の決め手となる。プーアル茶を例に挙げれば、かつては釜炒り殺青が主であったが、高温の釜で短時間しか加熱しないため、加熱が均一ではなく、茶葉には一定量の酸化酵素が残った。当時の技術条件が、偶然、後発酵をもたらしたのである。
一方、日本で一般的な蒸し緑茶は、蒸して殺青を行う。高温・高湿の蒸気で短時間蒸すことで、可能な限り酸化酵素の働きを止め、色・風味を閉じ込める。この工程が徹底されるほど、茶葉の品質は安定するが、発酵・熟成の可能性は断ち切られることになる。そのため、日本の茶人たちは、茶を長く放置した場合に起こるのは「発酵・熟成」ではなく、酸化、風味の劣化、変色と考えている。
和の趣を感じさせる抹茶
中国人は茶葉の保存を製茶工程の一部と考える。プーアル茶、六堡茶、茯磚茶を例に挙げると、包装されて製品となって倉庫に収められてからも、後発酵と呼ばれる自然発酵が進んでいる。生物学では後熟作用と呼ばれ、「食品貯蔵化学」のカテゴリーに属する。適度な温度と湿度の下で、茶葉の風味は増していく。
これに対し、日本茶の論理は正反対である。製造後、すぐに冷蔵庫に保管され、温度、湿度、微生物の影響を最大限排除し、安定的で制御性、再現性の高い風味を追求している。食品工学の視点から見れば、非常に成熟した工程であるが、「熟成茶」の視点から見れば、時間の扉を閉ざす行為である。
中国茶は意図的に保存熟成を行うが、日本茶は保存自体を避けるか、できるだけ保存期間を短くしている。
陳年六堡茶
老茶の熟成茶葉
中国の食文化には古いものを愛でる伝統が根付いている。例えば、山西では、酢といえば必ず醸造酢を使用する。四川料理に使用される豆豉には、三年物、五年物、十年物があり、熟成期間が長いほど価値は上がる。
四川料理のシェフは、熟成豆鼓を使用した麻婆豆腐を上等品と考える。さらに、白酒は熟成が進むほど価値が上がる。一方、日本の国酒である清酒は新しいものを口にし、古いものは飲用には向かない。広東の陳皮も山西の醸造酢も、熟成したものが尊ばれる。
中国の茶文化において、茶製品は必ずしも標準化されていない。明代の李元陽は著書『大理府志』で、「点蒼茶の木は高さ二丈に成長し、味わいは楊仙茶に劣らない。長く貯蔵するほど風味が増す」と記している。「長く貯蔵するほど風味は増す」とあるように、時間はひとつの変数になっている。
明・清代以降、中国では「熟成茶分類体系」が確立され、黒茶と白茶は「長期保存が可能」であることを基本属性とした。ウーロン茶や紅茶も、適切に加工し、正しく保存すれば熟成茶として楽しむことができる。
かつては、広西梧州茶の産地にも「広西陳茶」と呼ばれる名茶があった。ここまで述べてきたことは、後に付託されたものではなく、長年にわたる経験がもたらした果実なのである。
翻って、日本の茶文化にあっては、時間は危険因子とされる。日本の茶道には煎茶道と抹茶道の二つの体系がある。煎茶文化は都市消費社会が出現した江戸時代に興った。煎茶は日常的に飲まれるようになり、「今年の茶」は「去年の茶」に勝るとされた。抹茶道において、この考え方は一層徹底されている。抹茶は繊細で、空気、光、長期保存を嫌う。そのため、新鮮な抹茶が尊ばれ、新茶をふるまって、客人に敬意を示した。
抹茶道においては、「新しい」ことが「正しい」のであり、古いお茶を出すことは失礼にあたった。
老茶の品評会に招待された筆者
実は、日本にも阿波番茶(徳島県発祥の後発酵茶)や碁石茶(高知県発祥の後発酵茶)といった発酵茶が存在する。これらは乳酸発酵の工程を経ているため、長期保存が可能である。スーパーで売られている阿波番茶のパッケージには、「三年熟成」「五年熟成」と大きな文字で表記されている。阿波番茶も中国のプーアル茶や六堡茶と同様に、製造後すぐには出荷せず、一定期間熟成させてから販売される。芳醇でまろやかな阿波番茶は、熟成茶好きの間で人気を博している。
従って、日本に熟成茶の文化が全く存在しないわけではない。
ところが、阿波番茶も碁石茶も日本の茶体系にあっては、地方性・民俗性を帯びたもので、決して主流ではない。製茶工程は多かれ少なかれ中国の影響を受けているが、「古いものほど価値がある」という文化的意義が付与されることもなく、審美の対象となることもない。
要約すれば、次のように言えるだろう。中国茶は時間を「協働者」と考え、日本茶は時間を「危険因子」とみなす。中国の茶愛好家は時間の力を尊び、日本の茶愛好家は時間の影響を警戒する。前者は変化を許容し、不確実性を受け入れるのに対し、後者は完成度を追求し、制御不能な要素を排除しようとする。そこに正誤の問題があるわけではない。中国茶は、もとより発酵の余地を残したものなのである。
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