六保茶のふる里

桂林の町
中国を代表する観光地として、ことに、日本人にとっては、南画の世界として知られる「桂林」の町がある。
桂林は、中国南端の省、正確には「広西壮族自治区」であって、文子通りの少数比族「壮族」を中心とする、各種民族の居住地である。それら諸民族は、自治によって行政を行い、それぞれの風俗習慣を守って暮らしている。
この自治区の東部隣りは、広東省に連らなるが、その広東省に近い省境の中心地で、周辺の山間地には、壮族をはじめ、苗族、瑶族、侗族と云った少数民族が多く居住している。
ひとくちに桂林と云うのは、町中いたる所に、金木犀・銀木犀の木が繁り、初秋の開花期ともなると、その香りでむせかえる程である。この木犀を中国では「桂花」と云い、「桂林」の呼び名がつけられた所以である。
桂林から陽朔太までの八十粁余りの船旅は、「漓江下り」と称して世界的に有名である。奇峰がそそり立ち、その幻想的な雰囲気は、正に山水画そのものである。しかしこの地方は、秋から春にかけては、雨の少ない季節になる為、桂林の観光は、夏から初秋にかけるのが無難である。
梧州の町
桂林から南方約三百粁、簡易舗装の山道を、車で七~八時間の距離に、広西省第三の町である梧州市がある。
広西壮族自治区は、現在、小数民族の自治区となっている。その昔、中国大陸を初めて統一した、秦の始皇帝は、華北の地から南方の海まで、運河を通し、南方との交流を計った。桂林北方の「興安」で、北方の湖南省に流れる「湘江」の支流と「漓江」を繋いで遂に広東省の「広州」まで通ずる船の道を開いたわけで、現在でも利用されている。桂林観光のついでにお出かけをお推めしたい所である。

始皇帝は、船運を通じ沿岸の地に「屯田兵」を駐屯させ、地域の開発を計ったわけで、広西壮族自治区は、広東省や福建省、さらに南方の雲南省等、中国南部としては、最も早くから開発された所である。
しかしその後、華北の漢族が南下するにつれて、揚子江(長江)沿岸に住んでいた諸民族が、南下せざるを得なくなり、最終的に、広西の地に多くの民族が定住することとなり、諸民族の、自治区としての行政単位となるに及んだ。
しかし乍ら、長い間、少数民族の居住地として開発の手が届かず、広東省や福建省に比べて後進地となってしまった。近年になって、中国政府は少数比族対策に留意し、広西自治区の開発はめざましいものがある。その一環として、茶業開発が山地経済植物として脚光をあび、「六保茶」が着目され、再開発へと急速な発展の途についた。
梧州市は、広西省の東部開発の拠点で、広西の輸出入港として、最大の基地となっている。輸出港と云っても、「朱江」を利用する河の港であり、広州の海に出るのに、ほぼ一晩を要する。帰途ともなると、広州から梧州までまるまる一晝夜をかけねばならない。目下、広西の南海岸「北海市」に、海の港の建設が急ピッチで進行しており、ここ数年後の完成を俟って、広西の一大飛躍が期待されている。
六保茶の楽しみ

グルメの食卓に六保茶
近年は、グルメ時代、飽食の時代とあって、食べ物への関心はひときわ高まり、日本に於て、世界中の主要な食べ物を味わうことも不可能ではない。世はまさに、食文化の花盛りである。
私達、日本人の食卓の変化は、油脂類の多くなったことと、肉食の回数が増えたことであり、それは、米食からの脱皮を考えさせられるほど顕著である。
日本茶が、日本料理、特に米食と共に発展して来たと同様に、現在の多様化した食べ物への茶の対応は、当然考えられるべき問題であり、六保茶のもつ諸特性からみて、最も適したものと云える。
中国に於ける、六保茶の飲用地域を見ると、広東省と、広西壮族自治区であり、東南アジアの一部にも普及しているが、それは、広東省出身の人達に受け入れられているのが実情の様である。
“食は広州に在り”と云われているが、この食に欠くことの出来ないのが、六保茶である。ただ、六保茶は、鳥竜茶又は普洱茶に比べると、ランクが上のため、一般が常用するには、若干無理があったが、最近は、大量生産によるコストダウンにより、普及率も急速に上昇している。
飲み易さが身上
六保茶は、黒茶ながら、普洱茶の様なカビ臭さを、殆んど感じないのが特長であり、嗜好飲料として最適のものである。茶葉のもつ渋味、タンニンが、完全に酸化しており、カテキンに変化しているためである。
このカテキンは、濃度が強くなると、飲んだ後、舌に“ピリッ”とした刺激を感じるが、少し経過すると、かすかな甘味として返ってくる。これがカテキンの甘味で、茶のもつ本来的な甘味である。
日本茶の甘味は、日本茶特有の「テアニン」によるもので、グルタミン系の甘味が舌の先端部に感じることになる。この辺が、日本茶と六保茶の甘味が異なるところである。
六保茶は、煮沸湯で煎出した方が、その特長を充分に味わうことが出来る。これも、六保茶が、渋味としてのタンニンが、カテキンに変化し、私達の舌に渋味としての刺徴を与えないからである。
六保茶は変質しない
六保茶は、黒茶であって、堆積醗酵、トンネル式熟成法等の特殊な工程により、葉緑素は完全に分解される。したがって、日本茶の様に、変質したり、劣化するということが無く、保存法も至って簡単である。密封した容器ならば、常温で充分保存することが可能で、湿気さえ防止出来るならば、長期間保存することによって、さらに熟成が進み、益々、六保茶独特の真価を発揮することになる。
六保茶は、熱湯で煎出して、ポット等の容器に注入してから、長期間おいても変質しない。夏場の飲みものとして、濃く煎出したものを、冷水か氷で割って飲むことによって、六保茶の長所を一層活かすことが出来る。学校給食、ハイキング、スポーツ等の飲料として、大いに活用していただきたいものである。
“容越しのお茶は飲むな”と云われているが、これは、六保茶には当てはまらない。
六保茶は、完全に熟成されているので、急須に入れたまま.一晩中放置しておいても、何等変質しないばかりか、むしろ余計に、美味しくなっているから妙である。夜中に飲用しても、睡眠を妨げるような事は無い。(松下智著『六保茶のしおり』東洋食研発行より抜粋)

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