茶の香りに宿る時間――「茶馬古道ロマン」展を見て

10月10日、日中友好会館美術館で2025年特別企画展「茶馬古道ろまん」が開かれた。私が展示室に足を踏み入れた瞬間、まるで見えない古道の上に立っているような気がした。そこには、四川から雲南、そしてチベットへと続く「南のシルクロード」――茶馬古道の世界が広がっていた。

およそ150点の展示品が静かに並び、まるで時間の結晶のように光を放っている。藍が深く染み入る白族の絞り染め、冷たい輝きを放つ鶴慶の銀器、素朴な黒陶やチベットの木椀。それらは山々の声であり、職人たちの息づかいでもあった。

「無形文化遺産」とは、決して大げさな言葉ではない。それは人々の日常の中に息づく小さな温もりであり、生活のリズムそのものだ。一針一針、槌の一打ごとに、山の暮らしと祈りが織り込まれている。標高2500メートルを超える大地では、芸術は飾りではなく、生きるための知恵であった。

後半の「聖なる地の手仕事」コーナーでは、信仰と日常が静かに溶け合っていた。甲馬版画の力強い線は、風が岩に刻んだ祈りのようであり、ウ銅走銀の器は夜空に流れる星のようにきらめいていた。そこには、時を越えても変わらぬ“手の記憶”が確かに息づいている。

そして、ヤン・リーピン氏とヤン・リーヤン氏姉妹による衣装作品。民族刺繍や絞り染めといった伝統の技が、現代のファッションに優しく融け込んでいた。古い歌が新しい旋律で再び歌われるように、無形文化は今を生きていた。

展示室を出るとき、ふと淡い茶の香りが漂ってきた。その香りに導かれるように思った――茶馬古道の「ロマン」とは、険しい山道や長い距離のことではない。それは人の心に今も残るぬくもりのことなのだ。風に磨かれた技と魂が、今も静かに息づいている。