2025年6月末、東京ビッグサイトで「第3回国際ウェルネスツーリズムEXPO」が開催された。今年も多くの来場者でにぎわった健康観光の国際イベントだ。人波が絶えず、多言語が飛び交う会場の中でも、あるブースにはひときわ人だかりができ、来場者が列を作って相談したり、次の説明会の開始を待つ姿が見られた。
来場者の注目を集めていたのは、がん検診の未来を変え得る最先端技術――「マイクロCTC検査」である。
がん細胞は早期段階で血中に漏れ出し、「CTC(血中循環がん細胞)」と呼ばれる。1ミリリットルの血液には約50~60億の血球が含まれているが、マイクロCTC検査の特徴は、これらの血球の中からわずか1~2個のがん細胞を正確に探し出せることだ。言い換えれば、従来の方法は腫瘍そのものを探しているのに対し、この技術では悪性化しつつある細胞を特定できる。特異度94.45%、感度85%という検査結果は、陰性であれば安心でき、陽性であれば重要な警告となる。
この検査を支えるのは、マイクロ流体チップと、世界有数のがんの研究治療施設「米国MDアンダーソンがんセンター」が開発したCSV(細胞表面ビメンチン)抗体を利用する2つの重要技術である。現在、日本でこの両方を組み合わせてマイクロCTC検査を行えるのは、株式会社セルクラウドだけである。
本年4月、セルクラウド取締役でマイクロCTC先進医療研究所所長、代々木ウィルクリニック院長の太田剛志氏は、同社が栃木県立がんセンターと「骨軟部腫瘍における血中循環がん細胞の意義に関する共同研究」を開始したと発表した。これはマイクロCTCを骨軟部腫瘍の検査に応用する試みである。その成果は、7月に奈良県コンベンションセンターで開催された第58回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会で報告された。
この種の腫瘍は、多くの上皮性がんとは異なり、共通の腫瘍マーカーが存在せず、MRIなどの画像検査に頼らざるを得ない。しかし画像では、腫瘍がある程度の大きさに成長して初めて検出可能になる。今回の最新研究では、Ⅲ・Ⅳ期患者の血液から高感度でCTCを初めて検出し、2種類の検査システムいずれでも良好な結果が得られた。これは、マイクロCTCがこの領域における新たな血液マーカーとなり、画像検査の限界を補う可能性を示している。
今後の研究では、患者の診断、化学療法、手術、術後といった各段階でのCTCの変化を追跡し、治療効果の評価、切除の完全性の判断、さらには画像検出前の再発予測に活用される予定である。
マイクロCTCは希少がん領域だけでなく、再生医療分野でも不可欠な役割を果たしている。近年、日本の幹細胞治療は、高度な医療を求める多くの人々を引きつけており、とりわけ中国からの患者が増えているが、この治療にはリスクが伴う。もし採取した脂肪や血液中にがん細胞が潜んでいた場合、それを体内に戻すことでがんの増殖を引き起こす可能性がある。
これまで、医療機関は幹細胞治療の前に一般的な腫瘍マーカー検査を行っていたが、この方法では早期や血中を漂う段階のがん細胞を見つけるのは難しかった。現在では、日本の一部医療機関が、治療前の検査パッケージにマイクロCTCを採用し、一度の採血で全身の血液循環中にがん細胞が存在するかを調べられるようになった。これにより、幹細胞治療の安全性が大きく向上している。
「幹細胞治療は高額だからこそ、安全で管理された基盤の上に行うべきです。マイクロCTCは患者と医師の双方にさらなる安心を提供できます」と太田院長は強調する。
セルクラウドは現在、日本全国189の医療機関と提携し、代々木ウィルクリニックを拠点にマイクロCTC検査の普及を進めている。採血から輸送、分析まで国内で完結でき、最短3~4日で結果が判明。多言語対応も可能だ。
研究面では、既存の上皮系CTC検査に加え、より早期段階での検出機能を組み込み、治療中の動態モニタリングの精度向上を目指している。
太田院長によれば、セルクラウドには欧米や東南アジアから医療視察団がほぼ毎週訪れ、マイクロCTCの現地導入に高い関心を寄せている。しかし、現地化には高度なチーム体制と品質管理が不可欠なため、当面は日本を検査・解析の拠点とし、国際的な検体輸送、結果のフィードバック、段階的な研修を通じて海外パートナーの能力構築を支援するモデルが現実的だという。
がん検診の分野では、高精度かつ早期発見の実現が常に課題とされてきた。マイクロCTCは、その課題に新たな解答を提示した。わずか一度の採血で、血液中にごく少量存在する浸潤性・転移性を持つがん細胞を捉えることができるのだ。
この検査は、希少がんの早期診断や幹細胞治療前の安全評価などで独自の価値を発揮し、世界のがん対策に新たな道を切り開きつつある。協力ネットワークの拡大と技術の継続的な進化により、マイクロCTCはがん検査のハードルを大きく下げ、「希望が常にリスクを上回る」状況の実現へと近づいている。
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